2020年01月17日 公開
2023年02月24日 更新
そこで、働き方が多様化する時代に向けて石山氏が提唱するのが「越境的学習」だ。
「ミドルの学びに必要なのは『越境』の体験です。これは、会社の中で学ぶだけでなく、職場の外でも学ぶということ。『自分がホームと思える場所』と『アウェイと感じる場所』を行き来し、ホームとは異なる知見や考え方を獲得する学びを『越境的学習』と呼びます。
多くのビジネスパーソンにとって、『ホーム』は今の職場です。40代にもなれば、仕事の段取りや手順を熟知し、社内人脈も豊富になるので、職場で仕事を回すのにそれほど大きな苦労をしなくなります。この快適な空間を抜け出し、異質な人たちが集まる中で、時には考え方の違いで衝突や軋轢を体験するからこそ得られる学びがあります。
それまでの経験や常識が通用せず、ある種の居心地の悪さを味わう場所が『アウェイ』です」
なぜ、アウェイを体験することが重要なのか。ここにも、今後訪れる働き方の変化が関係している。
「厚生労働省の報告書『働き方の未来2035』において、約20年後の働き方は『プロジェクトの塊』になると予測されています。インターネットやモバイルなどの技術革新によって時間や空間に縛られない働き方が可能になると、会社に所属していたとしても、社内外の人で構成されるプロジェクトで働くことが多くなります。
こうしたプロジェクトでは、多様なメンバーが存在するようになるため、上下の指揮系統だけで運営することが難しくなります。一つの目的のために集まった初対面の人たちが、従来よりもフラットな関係の中で仕事を進めなくてはいけない。同じ職場で同じ顔ぶれと仕事をしていたときとはまったく違うコミュニケーション力が求められます。
上下関係の影響が低下すると各人の主体性が求められ、抽象的なミッションから具体的な手順や作業を考える力も必要となります。こうした力を養うには、今のうちからアウェイを経験し、失敗や試行錯誤を繰り返しながら学ぶしかありません」
では、具体的にどのような越境的学習の場があるのか。石山氏は「四つのワーク」という考え方が参考になると話す(図)。
「報酬をもらう『有給ワーク』、家事・育児・介護などの『家庭ワーク』、社会や地域に貢献する『ギフト・地域ワーク』、自発的な学習や趣味を楽しむ『学習・趣味ワーク』の四つのうち、複数を同時に行なうことをパラレルキャリアと呼びます。
いわゆる日本型雇用の会社員は『有給ワーク』一本槍であることが多いのではないでしょうか。有給ワークも、複数行なえば兼業・副業としてアウェイを経験することになりますが、本業しかない人はアウェイをまったく経験していません。
今いる会社の業務だけに専念している人こそ、有給ワーク以外の三つのワークを体験できる場に積極的に出ていくべきです」
更新:11月24日 00:05