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根拠ある自信をつける 「絶対悲観主義」のススメ

2019年12月26日 公開
2024年12月16日 更新

楠木建(一橋ビジネススクール国際企業戦略教授),伊藤羊一(Yahoo!アカデミア学長)

大体が上手くいかないから、ちょっとしたことでも嬉しい

 楠木 だからってわけじゃないですが、自己革新とかいう人は、あまり好きじゃないんですよね。もちろん、結果的にあのとき変わったっていうのは、誰しもあると思いますけど、手帳に自己革新を計画する人は僕は信用しないですね。「じゃあ今までのおまえは何なんだよ」っていう。何もないから変われるんだろうぐらいに思いますけどね。

 オッサンの説教はいつの時代も変わらないわけですけれども。みんなうまくやろうとしすぎ。そんなうまい話はあるわけがない。多くの人がそれぞれの利害を抱えて生きている世の中です。そんなに自分の思い通りいくはずありませんから。絶対悲観主義が昔からの僕の信条です。1つもいいことない、絶対うまくいかない、もう自分の思いどおりになることなんて1個もないっていうふうに、わりと信じてます。15、16、17歳の頃から。

 伊藤 早いですね(笑)。

 楠木 とにかく事実としていいことなかったんで。ただ、やっぱり世の中にカラフルな人というのがいますね。自己認識が、自分はなんかこうイケる、自分は人から必要とされてるとか、好かれてるとかいう雰囲気が全身からにじみ出ている、そういう人っていますでしょう? それは本当に屈託なくて羨ましい。キラキラしていていいなと思うんです。生まれ変わったらそうなりたい。

――本当にそう思ってます?

 楠木 思ってますよ。でも、自分は絶対に1個もいいことないっていうふうに思っていると何がいいのかっていいますと、ちょっとうまくいくと、すごい嬉しいんですよ。

――得ですね、なんか。

 楠木 そうです、そうです。しかも、絶対うまくいかないと思ってるんで、ためらいがないですよね、やってみることに。どうせダメでもともと、やってみようと。挑戦するっていう人は、「挑戦してうまくやろう」、もしくは「挑戦した結果、成功しよう」と思って挑戦って言ってるんですけど、僕の場合は事前に成功っていうのがあまりないんで、挑戦っていう感じじゃないんですよ。とりあえずやってみる。でも、絶対に自分の思い通りになんていかないと思います。

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プロフィール

楠木建(くすのき・けん)

一橋ビジネススクール PDS寄付講座競争戦略特任教授

1964年、東京都生まれ。89年、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。専攻は競争戦略。企業が持続的な競争優位を構築する論理について研究している。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『室内生活 スローで過剰な読書論』(晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる 仕事を自由にする思考法』(文藝春秋)など。

伊藤羊一(いとう・よういち)

武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 学部長

Musashino Valley 代表、Voicyパーソナリティ

アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとするすべての人を支援する。また、ウェイウェイ代表として次世代リーダー開発を行う。代表作「1分で話せ」は70万部のベストセラーに。

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