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「仕事でやりたいことがない」人は終わっているのか?

2019年12月18日 公開
2024年12月16日 更新

楠木建(一橋ビジネススクール国際企業戦略教授),伊藤羊一(Yahoo!アカデミア学長)

使命感はいらない――「消極的な職業選択」

 楠木 例えば、組織の中で働きたくない。理由は2つあります。自分の具体的な経験でつくづく思い知らされたことがありました。

 1つは、チームワークっていうのが、ことごとくダメ。子どもの頃からの学生生活で、なんとなくわかっていました。2つ目は、自分の仕事の評価主体が組織の中にあって欲しくないということです。会社に入ると、直接評価する人が上司になったりしますでしょう。そうではなくて、できたら外部の顧客からの直接評価にさらされるような仕事をしたいと考えていました。

 この2つが重なったところに、あまり「会社」には入らないほうがいいんじゃないかという結論が出たわけです。

 だからといって、当時は、もう本当に子どもなんで、「じゃあ、どうするんだ」というとですね、個人商店とかぐらいしか思いつかないわけです。具体的な解として。今の若い人みたいに起業するなんていう発想は、まったくありませんでした。また、そういうタイプでもないので。とにかく根性がない。これはもう、子どもの頃から繰り返し、嫌というほど思い知らされた。

 ということで、やりたくないことはなんとなくわかったと。じゃあ、どうするんだというと、何もしない。卒業しても、何もしてなかった。就職もせずに。

 ある方から「学者になれば、まあまあ、君が言ってるような、嫌なことは回避できるのではないか」とアドバイスをいただきました。ただし、それが好きかどうかは別として、です。「思いもよらなかった人生のオプション」として大学院に行きました。

 つまりですね、ものすごく「形から入っている」んですよ。学問的な使命感とかそういうのは一切ありませんでした。「こういうことを研究したい」っていうのがなかったのです。

 今の私の仕事ですと、一応大学という組織の中にはいます。とはいえ、上司から評価されるような仕事ではなくて。授業をやったり本を書いたりして、それを受講したり読んだりしていただいた方から、良いだの悪いだの評価をいただく。会社のお手伝いをするにしてもそうです。加えて、子どもの頃から読んだり考えたりするのが結構好きだったんですね。さらに言えば、発表するっていうのが好きなんですよ。

 伊藤 それはあれですか、バンドやっていた経験とか?

 楠木 それもそうですよ。バンドもそうです。もっと前だと、本みたいのを自分で書いたりして。誰も読まないんですけど(笑)。

 伊藤 それは、今のお仕事につながってますね。

 楠木 思考の一つの本質は言語化ですよね。人に伝えるような形で言語化するっていうことが好きなんです。ですから、もちろんそれが具体的にどういう研究をするかということではありませんでしたが、「まあ、いいのかな」というふうに思って。よく「おまえには使命感がない!」とか言われながら、大学院に行ってました。でも、本当にないんで、ないものは仕方がない。

――それを包み隠さず……。

 楠木 ええ。それで、何年か経ったらですね、大学に職を得ることができて。そのときは、「シメシメ……」と。まさに嫌なことを回避し、まあまあ好きな、ゆっくり勉強でもして、何か考えて、何か書いたりっていうことを始めたんですけれども。もちろん、そんなにうまい話はなくてですね。気づいてみると、非常によくない状態になっていました……

 

次回は12月20日更新です。

プロフィール

楠木建(くすのき・けん)

経営学者、一橋大学PDS寄付講座・シグマクシス寄付講座特任教授

一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。一橋大学商学部専任講師、同助教授、ボッコーニ大学経営大学院客員教授、一橋ビジネススクール教授を経て 2023 年から現職。著書に『楠木建の頭の中 戦略と経営についての論考』、『楠木建の頭の中 仕事と生活についての雑記』、『経営読書記録(表)(裏)』(いずれも日本経済新聞出版)、『絶対悲観主義』(講談社+α新書)、『逆・タイムマシン経営論』(日経BP、共著)、『「仕事ができる」とはどういうことか?』(宝島社、共著)、『室内生活 スローで過剰な読書論』(晶文社)、『すべては「好き嫌い」から始まる 仕事を自由にする思考法』(文藝春秋)、『戦略読書日記』(プレジデント社)、『経営センスの論理』(新潮新書)、『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』(東洋経済新報社)ほか多数

伊藤羊一(いとう・よういち)

武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部 学部長

Musashino Valley 代表、Voicyパーソナリティ

アントレプレナーシップを抱き、世界をより良いものにするために活動する次世代リーダーを育成するスペシャリスト。2021年に武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(武蔵野EMC)を開設し学部長に就任。2023年6月にスタートアップスタジオ「Musashino Valley」をオープン。「次のステップ」に踏み出そうとするすべての人を支援する。また、ウェイウェイ代表として次世代リーダー開発を行う。代表作「1分で話せ」は70万部のベストセラーに。

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