2020年01月14日 公開
2023年02月24日 更新
大切な人の死後、直後に考えなければならない相続。実際にはどんな流れで進むのか。また、日頃から備えておけることはあるのか。いざというときのために知っておくべき相続の基礎知識について、相続に関する相談に乗る司法書士の野谷邦宏氏、行政書士の花方亜衣氏にうかがった。(取材・構成=内埜さくら)
※本稿は、『THE21』2020年1月号より内容を一部抜粋・編集したものです。
大切なご家族をなくした後に直面する、相続。遺されたご遺族にとっては、ただでさえ悲しみの中にあり、葬儀などで慌ただしい日々の中、すぐには考えられない、と思われるかもしれません。
しかし、相続に関する手続きには期限があり、大変な状況であってもなるべく早くスムーズに進める必要があります。たとえば相続放棄を検討しているのであれば、3カ月以内に結論を出さなければいけません。相続するのであれば相続税が発生するかを確認し、納税する必要があれば10カ月以内に申告と納税の手続きをする必要があります。
いざというときに慌てないためには、故人の準備も重要ですが、相続人となる人が事前に知識をつけておくことも必要になります。
まずは大まかな流れを把握しておきましょう。相続人となったら、次の三つのことを必ず3カ月以内に行ないましょう。
(1)遺言書を確認する
確認方法は現状、2種類あります。まずは自宅を探す。次に公証役場で公正遺言証書を確認。2020年7月からは法務局が、「遺言書保管法」という、自筆証書遺言を預かる新制度をスタートさせます。
近年ではエンディングノートを書く方も増えていますが、法的効力を持たないため、遺産相続の手続きのためには必ず遺言書を確認してください。
(2)相続人を確認する
遺産相続を行なうためには、相続人全員で協力して進める必要があります。そのため、誰が相続人に当たるのかを確認しなければなりません。
それには、出生から死亡まで、故人のすべての戸籍謄本を収集する必要があります。死亡時と出生地の戸籍が別というケースは珍しくありませんし、出生地を特定できても、本籍地の履歴がわからないというご遺族のご相談も頻繁に受けています。「以前の本籍地が遠方で現地に赴く時間が確保できない」などというケースもあります。
このような煩雑さをともなう、故人の戸籍謄本収集。専門の業者に依頼をするか、「法定相続情報証明制度」を利用するのも一つの手段です。2017年に開始されたこの制度を利用すると、故人と相続人の戸籍謄本の内容を1枚にまとめた、「法定相続情報一覧図の写し」が発行され、1枚で戸籍謄本一式の代わりにすることができます。無料で発行してもらえるため、費用の負担も軽減されます。一式を求められた場合は、「写し」が利用可能かを確認しましょう。
(3)相続財産の把握と遺産整理
相続財産の把握で大変なのは、「何がどこにどれだけあるのかわからない」ということです。
まず、相続財産の資料になりそうなものを、自宅から探してみましょう。故人が大切なものを保管していた棚やタンス、神棚、仏壇、金庫などから探します。銀行の貸し金庫を契約していたかどうかも確認を。
重要な資料となるのが、通帳と郵便物です。通帳は預貯金の残高やお金の流れを見ることができます。郵便物は納税証明書や生命保険の契約、証券会社や金融機関との取引の有無を知る手がかりになります。過去1年間分程度を見てください。
ひと通り探したら、以下の関係各所に問い合わせ後、分類して目録化し、可視化しておくと整理が楽になります。
・預貯金→銀行
・不動産→法務局
・株式など→証券会社
・生命保険→保険会社
・自動車→陸運局
・借金→金融機関
他に、近年急増しているのが「デジタル遺品」、すなわちネット銀行や証券の口座等です。
ほぼインターネット上で取引が完結するため、遺族が口座の存在を知らないまま、デジタル機器内に埋没する可能性があります。こういった事態を回避するためには、生前に家族内で口座の存在やパスワードを共有しておくことが重要です。
ただし、パスワードを記載した遺言書には封をする、貸し金庫で保管するなど、情報が流出しないよう十分に注意しましょう。2020年7月から開始する法務局の遺言書保管制度を利用することも有効です。
借金や未払いの税金などは、相続人にとってマイナスになる財産です。場合によっては相続放棄が必要な場合があるため、早急に信用情報機関に情報請求するとスムーズです。
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更新:10月06日 00:05