2020年01月14日 公開
2023年02月24日 更新
日々相続の相談に乗っている野谷氏、花方氏によれば、相続のトラブルは資産家に限った話ではなく、一般的な家族でも訴訟に発展するケースは多いという。よくある事例と対処法について紹介する。
【Case1】相続人間の不和
「子供の頃、兄貴のほうが可愛がられていた!」
故人の遺産を長男と次男の2人が相続することに。手続きには相続人全員の戸籍謄本、実印と印鑑証明書が必要だが、弟が提出を拒否。幼少期に「兄のほうが親から可愛がられていた」と、積年の恨みが理由だ。非協力者が一人でもいると手続きが進められない。もちろん弟は相続放棄の手続きも取らなかったため、膠着状態に。現在、二人は音信不通で、故人の遺産は10年以上も放置されたままだ。
【野谷氏・花方氏からのアドバイス】
子供の頃の恨みを持ち出すというのはよくあるケース。生前の対策として、コミュニケーションを取り、元気なうちから話し合っておくことが必須です。また、相続人の側も、「遺産は故人が遺族全員の幸せを願い遺してくれたもの」と認識することが何より大切です。
【Case2】相続人の配偶者の横やり
「もらえるものはもらっておかなきゃ!」
長男、次男、長女の3人が亡父の遺産を相続することになったが、思いのほか高額であることが発覚。相続人間の仲は円滑だが、大金が舞い込むとわかった相続人の配偶者が欲を出し、少しでも多く遺産を手に入れようと横やりを入れ出した。親族会では各々が自分勝手な言い分を述べて大荒れに。配偶者自身は民法で定められた法定相続人ではないが、相続人たちが配偶者の意見を無下にできない様子。
【野谷氏・花方氏からのアドバイス】
例のように多額の遺産でなかったとしても、配偶者の介入によってまとまらなくなるケースは非常に多くあります。ベストな対策は、故人が生前から遺言書で資産分けの方法と主旨を書き記し、エンディングプランを明確に相続人へと伝えておくことです。
【Case3】遺産分配の問題(遺言・特別受益・寄与分など)
「姉さんばっかり、頭金出してもらって……」
ある男性は4子中、長女にのみマンションの頭金を出したため、他の子供たちから「特別受益」(相続人が被相続人から生前贈与などの特別な利益を受けていること)を責められないか不安。また現在は長男の妻に介護を受けているため、「特別寄与料」(被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供などにより、健康維持などに特別の寄与をした場合)として遺産を渡すかも検討中。
【野谷氏・花方氏からのアドバイス】
遺言書に遺産の分配とその理由について残すのが基本。委託者が自分自身の財産を信頼できる受託者に信託できる、「家族信託契約書」も併せて作成を。特別寄与者については「介護のために仕事をセーブし、本来もらえるはずの賃金を減らしてまで貢献した」などの場合は認められやすいです。
【Case4】「二次相続」を考えずに進めてしまう
「こんなに相続税がかかるなんて……」
父親が急逝。父は相続税税節税を第一に考えて、最も相続税がかからない相続人である母親にすべて遺産を相続してもらうよう遺言書を作成していた。2年後に母親も他界。母親自身にもかなりの貯蓄があり、父親の遺産も含めた母親の遺産相続(=二次相続)では子供たちが膨れ上がった相続税を負担することに。しかも、父親と母親は異なる観点で遺言書を作成していたため、きょうだい間で受取額に対する意見の相違が勃発。
【野谷氏・花方氏からのアドバイス】
故人の配偶者は老後の生活保障などの観点から、税額の軽減措置を受けられるようになっていますが、それに便乗してしまうとこのケースのような事例も。親の相続を考える際は、二次相続を考慮してトータルの金額を意識しましょう。生前のコミュニケーションはこのケースでも重要です。
更新:11月24日 00:05