2019年10月15日 公開
2023年02月24日 更新
本から始めたAmazonや、靴の販売に集中しているロコンドなど、「わらしべ戦略」を実践しているケースはたくさんあります。そして両者とも、事業を始めた時点から「いずれAmazonではあらゆるものを扱う」「ロコンドは洋服やバッグも含めたファッション通販サイトとして勝者になる」と考えていたはずです。
それでもあえて意図的に小さく始めた。それは「セグメント・ナンバーワン」になれば、わらしべ長者的に事業の価値を拡大していけることを理解しているからです。
これから新規事業を始めるなら、小さい会社や資金がない会社こそ、ぜひこの戦略をベースに成長のシナリオを描いてください。
一方で、大企業の人たちからは、新規事業を提案しても「うちの会社でそんなに小さい売上規模しか見込めない事業をやってどうするんだ」と言われて事業プランを却下されてしまう、という相談をよく受けます。
この場合も、「長期的に見ればわらしべ戦略で事業を大きく成長させることができる」と説明すれば、会社を納得させる材料になります。
「自分たちは目指すゴールは非常に高いが、そこへ到達するためにあえて小さく始めるのだ」という意志を長期的な戦略とともに伝えることで、説得力が生まれるはずです。
「そんなことを言われても、ナンバーワンになれる領域なんてほとんどないでしょう」
そう思うかもしれませが、「ナンバーワンになれるセグメント」を切り出せばいいのです。
今までにない領域を勝手に作り出して、新たな成長分野として定義する。
これが事業戦略を立てる際の重要なポイントです。
私がパーソナル英会話トレーニング事業「トライズ」を立ち上げたときも、この手を使いました。
実は大人向け外国語教室の市場は、ここ数年ほどは2,100億円ほどの規模でずっと横ばいが続いています。
この市場全体で見ると頭打ちで、今後も大きな成長は見込めないと判断すべきでしょう。
ただし、私がやりたいのは「一人ひとりのニーズに合わせたパーソナルコーチング型の英会話スクール」でした。
今でこそ類似の教室が増えていますが、当時は英会話教室といえば全員が一律のコース内容と教材で学ぶスタイルしかありませんでした。トライズが始めようとしていた「パーソナルコーチング型英会話事業」という市場は存在しなかったのです。
そこで私は、別の業界のコーチング型事業について調べてみました。
具体名を出すと、ライザップです。
フィットネスと英会話で扱う内容は異なるものの、パーソナライズした高付加価値サービスである点で、ライザップとトライズは共通しています。一般的なフィットネスクラブより料金設定は高額でも、自分のニーズに合わせて指導してくれるなら通いたいという人がどの程度いるかを調べれば、「一般的な英会話学校より料金設定は高額でも、自分のニーズに合わせて指導してくれるなら通いたい」というトライズのユーザー規模を知る目安になると考えました。
調べてみたところ、当時のライザップの売上は年間200億円ほどでした。フィットネス市場全体の売上は約4,000億円規模なので、ライザップのシェアはおよそ5%になります。
そこで私は、大人向け外国語教室の市場のうち、コーチング型英会話のシェアも同程度は取れるだろうと考えました。市場全体が約2,000億円規模なので、5%なら約100億円です。
現時点で存在していない「パーソナルコーチング型英会話」というセグメントなら、100億円規模までの成長が見込めるわけです。
もしトライズ以外に競合が出てきても50億円、競合が4社出てきても、それぞれが20億円規模まで成長できる見込みがあります。
しかもこれまで存在しない市場を新たに作り出したので、「パーソナルコーチング型英会話市場」としては倍々ゲームで成長できる可能性もあります。
つまり「上りのエスカレーター」に乗れるわけです。
更新:11月22日 00:05