2019年10月11日 公開
2023年02月24日 更新
ミスゼロ運動や事故ゼロ運動をしている会社、ミスに対して激高し部下を恐怖に陥れる上司、過度にコンプライアンスにこだわる企業や団体では、その意図に反して「ミスの隠ぺい」が起こりがちだ。
※本稿は、吉田幸弘著『リーダーの「やってはいけない」』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
ある会社で、重大なミスが発生しました。
初めて取引が決まったA社との契約書を、担当の営業マンが社内で紛失してしまったのです。しかも、かなり大口の取引が望めるお客様でした。
慌てて再発行のお願いをしたものの、先方の法務部が「そのようなだらしない会社とは取引しない」と激怒してしまい、せっかくコンペに勝ったにもかかわらず、同業他社に契約が変更になってしまいました。
その後、ミスをした担当の営業マンは常日頃から忙しく、毎日夜遅くまで残業を続けていたということがわかりました。
しかも、実は今回の騒動の2カ月前に、別の会社との取引でも請求書を紛失していて、再発行してもらっていたということが判明しました(その会社とは取引が長く、相手も細かい人ではなかったので「再発行しますね」で済んだとのことでした)。
担当の営業マンは、この件を周囲の同僚や先輩、上司に報告していませんでした。
なぜなら、その支店では、「ミスゼロ運動」を熱心に続けていたからです。
それは、営業支店ごとに行われていたキャンペーンで、その支店がミスゼロを6カ月連続で達成すると、本社から表彰を受けるという制度でした。
結局、このケースでは6カ月目に契約書紛失事件が起きたので、表彰はされませんでしたが、もっと前にミスは起きていたにもかかわらず、「ミスゼロ」を徹底するあまりに、自分からミスゼロを言い出せない空気が出来上がっていたのです。
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更新:11月22日 00:05