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外資系勤務から大学准教授、そして起業。雇用機会均等法1期目の女性社長の異色キャリア

2019年09月11日 公開

山口葉子(ナノエッグ社長)

自分にしかできないことで人の役に立つ方法

 

 皮膚科学の研究をもとに化粧品を開発している大学発のベンチャー企業・ナノエッグ。その創業社長である山口葉子氏は、もとは化学の研究をしていた。そこから、外資系企業勤務、ドイツ留学での博士号取得ののち、畑違いの医学の世界に飛び込み、誰も注目していなかった皮膚科学の研究に着手、さらに起業と、様々なチャレンジと紆余曲折を経て現在に至っている。昨年発売した「MediQOL(メディコル)」は、自身の子供のアトピーが開発のきっかけだ。そのキャリアについてインタビューをした。

 

初めての女性研究員として外資系化学企業に入社

 私はもともと「人の役に立ちたい」という気持ちが強かったんです。それなら外科医か弁護士だなと思ったのですが、文系科目が苦手だったので、外科医を目指すことしました。しかし、医学部に入れる成績ではなく、家も豊かではなかったので、国立大学の工学部に入学することになりました。

 入学はしたものの面白くなくて、まったく勉強はしませんでしたね。これではいけないと思って、大学院に進学することにしたんです。

 当時は女性が研究者としてキャリアアップすることなんて考えられていませんでしたから、大学院の建物には女子トイレもなく、私が要望して一つだけ作ってもらいました。

 その頃は最先端だった、コンピュータシミュレーションを使った分子軌道法の研究をしていたのですが、そこで出会った先生に「君は研究者に向いている」と言われました。なぜそう思ったのかは教えてくれませんでしたが、自分も研究が楽しかったので、「そうなのかな」と思うようになりました。その先生とは今でも仲が良くて、毎年、バレンタインデーにチョコレートを送っています(笑)。

 研究者に向いていると言われたとはいえ、やはり、女性が理系のアカデミズムの世界で研究者になる道はなかった時代です。ちょうど男女雇用機会均等法が施行された年で、企業が少数ながら女性研究員の募集を始めたので、そこに応募することにしました。ダウコーニングという外資系企業です。まさか自分が採用されるとは思わず、教員免許を取っていたので、「気が進まないけど、落ちたら教員になろう」と思っていました。

 最終面接まで進むと、日本人の社長が面接官でした。そこで、今ではあり得ないことだと思いますが、「恋人はいるの?」と聞かれました。「います」と答えると、「そのうちに結婚するかもしれないでしょ。出産もするかもしれない。そのとき、仕事はどうするんだ?」と聞かれたので、「そんなのわかりません」と答えました。だって、わかりませんから(笑)。

 そんなことを言ったので、なおさら採用されるとは思っていませんでしたが、結果は合格でした。ダウコーニングで初めての女性研究員になったのです。

 ダウコーニングでは、好きなことを好きなようにさせていただきました。商品開発の経験もさせていただきましたし、失敗も経験しました。その代わり、「女性だからできない」と言うこともしませんでした。工場で200kgのドラム缶を転がして運ぶのも、同期の男性と一緒にやりました。

 

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博士号取得後、異分野に非正規職員として入り込んだ >

著者紹介

山口葉子(やまぐち・ようこ)

〔株〕ナノエッグ代表取締役社長

ダウコーニング〔株〕、横浜国立大学大学院工学研究科人工環境システム学専攻に勤務後、聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター客員教授(現職)。科学技術振興機構プレベンチャー事業サブリーダーを経て、2006年に〔株〕ナノエッグを設立、代表取締役社長に就任。12年、Japan Venture Awards中小企業庁長官賞受賞。17年、第3回日本ベンチャー大賞の経済産業大臣賞「女性起業家賞」を受賞。ドイツ・バイロイト大学自然科学群卒業、理学博士。

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