2019年09月17日 公開
2023年07月12日 更新
メタ思考で線を引き直すことのトレーニングとして取り上げるのは、「自分の製品や会社の競合はどこか?」というトレーニングです。
通常「非メタ」のレベルで考えると、同じような見た目や機能を持った同種の製品・サービスを作っている「同じ業界内」の会社ということになります。ところが実際に顧客を奪い合っているのは、同じ業界の会社同士ではないかもしれません。
例えば、「吉野家の牛丼」を食べる人というのは、果たして毎回「松屋の牛丼」か「すき家の牛丼」かという選択肢を並べて吉野家を選択しているのでしょうか。
もちろん近くにそれらの店が密集しているのであれば、そのようなこともあるでしょうが、よほどの牛丼激戦区でない限り意外とそのような場面は少ないでしょう。
例えばランチタイムのビジネスマンが多く往来するような場所であれば、牛丼チェーンで食べようという選択肢を考えている人は、「時間がないので早くそれなりのもので済ませたい」という「目的」を持っている人が多いのではないでしょうか。
そうすると、実は吉野家の競合は「立ち食いそば屋」や「カウンター席のみのカレー屋」である可能性があります。このように、「目的」を考えると、競合相手がまったく変わってくるのです。
このように、特に選択肢が多く提供されている状況では顧客の意思決定は「同種の商品やサービス」ではない可能性が高いので、上位目的、つまりメタの視点で考えることが重要であると言えます。
【演習問題】
「昔ながらの喫茶店」の競合はどこ(何)か(だったか)?
・検討ステップ(1)
まずは昔ながらの喫茶店に行く目的をなるべく多く列挙してみましょう。
例:コーヒーを飲む、暇をつぶす……
・検討ステップ(2)
各々の目的の仮説に対して、「別の手段」がないか、喫茶店業界以外の選択肢をなるべくたくさん考えてみましょう。
例: 「コーヒーを飲む」なら、コンビニで買う、自販機で買う、家で自分で作る、オフィス(や家庭)のコーヒーマシンで……。「暇をつぶす」なら、スマホのゲームやLINE、本……
【解説】
こう考えてくると、「喫茶店に行く」という行為一つとっても、実は様々な目的を持って行っていることがわかります。「顧客ニーズが変化する」とはよく言われる言葉ですが、「快適に時間を過ごしたい」「他者とのコミュニケーションをうまく行いたい」といった上位目的は、そう簡単に変化するものではありません。メタ思考で考えるというのは、そのように「簡単には変わらないもの」に立ち戻って代替手段を考えていくことです。
東京の都心では、すっかり「昔ながらの喫茶店」を見ることはなくなってきました。これを単純に「コーヒーチェーン店が台頭したから」という動きだけでとらえていると、「お客をどこに取られているか?」を見誤ることになりかねません。
また、目的として想定される「暇つぶし」や「待ち合わせ」「ゲーム」「新聞雑誌を読む」あるいは「友人知人とのコミュニケーション」「(書類を広げて)仕事をする」といったものの大部分が、いまやスマートフォンで代替可能になっているということにも改めて気づかされるでしょう。
【応用問題】
・「若年層に車が売れなくなった」ことの「競合」は何だったか考えてください。
・時代の変化とともに「同じ目的を満たす他の手段」が出てこなかったか考えてみてください。
・車を所有することの上位目的は何だったでしょうか。それを別の手段で満たしていることがないか考えてみましょう。
(例えば若者の「お金の行き先」がどう変わったかから考えてみてください)
更新:11月22日 00:05