THE21 » キャリア » 「集中力を高める」ためには、何をするのが本当に効果的なのか?

「集中力を高める」ためには、何をするのが本当に効果的なのか?

2019年08月23日 公開
2023年03月02日 更新

井上一鷹(ジンズ JINS MEME事業部 事業統括リーダー)

制限時間を決めて「集中する時間」を予約しよう

井上一鷹

 

 多忙なビジネスパーソンが資格試験の勉強をする際には、記憶や思考の時間当たりの密度を高くして、効率的にインプットをすることが必要だ。つまり、高い集中力が不可欠なわけだが、集中力を高めるには、いったいどうすればいいのか。集中について探究している井上一鷹氏に、具体的なノウハウを聞いた。

 

集中しているときに身体に起きる変化とは?

 そもそも「集中力」とは、いったいなんでしょうか。集中は心理学や脳神経科学で扱われるテーマですが、実は、明確な定義はなされていません。

 そこで私たちは、普通のメガネと同じように装着することで、姿勢、目の動きやその速度、瞬きなどを計測するメガネ型デバイス「JINS MEME」を開発するにあたって、集中を「個人が高いパフォーマンスを出すために一つのタスクに没頭している状態」と定義づけました。

 では、この状態のとき、身体にはどのような現象が起きているのでしょうか。

 集中しているときの第一の特徴は、瞬きの回数の減少です。これは、緊張感のある集中を意味します。

 しかし、さらに深く集中した状態になると、瞬きのタイミングが一定になるという現象が起こります。これは、リラックス時の特徴です。

 緊張とリラックスという、相反する状態が併存することで、没頭が瞬発的なものではなくなり、一定時間持続する深い集中になるのです。

 この深い集中は、心理学者のミハイ・チクセントミハイが発見した「フロー」と呼ばれる状態です。このとき、視界では集中の対象だけに光が当たり、他の部分は暗いモノクロ、もしくはスローモーションのような曖昧な動きに見えます。これが、高いパフォーマンスを実現する、理想の集中状態です。

 こうした体験をよくしているという人は、非常に少数でしょう。しかし、集中している対象以外のものが目に入らず、気がついたらかなり時間が経っていたという経験を、子供の頃にしたことがある人は多いのではないでしょうか。

 子供が何かに夢中になっているときは、紛れもなくフロー状態です。しかし、大人になると、その機会はほぼゼロになってしまうのです。

 

次のページ
人間の集中力は43歳前後が最も高い! >

著者紹介

井上一鷹(いのうえ・かずたか)

〔株〕ジンズ JINS MEME事業部 事業統括リーダー

1983年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、アーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。2012年に〔株〕ジンズに入社。集中力を測定できるメガネ型デバイス「JINS MEME」の開発とそれを通した分析、ワークスペース「Think Lab」の運営など、人間の集中力に関する研究開発に取り組んでいる。著書に『集中力』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

THE21 購入

2024年12月

THE21 2024年12月

発売日:2024年11月06日
価格(税込):780円

関連記事

編集部のおすすめ

脳のタイプ別「フロー状態」に入る方法

小沼勢矢(プロ・アライブ社長)

たった1時間の「オフライン」で、集中力は高められる!

西多昌規(精神科医/医学博士)

手術でミスをしないために「集中力」は不要!

菅原道仁(脳神経外科医)