2019年10月17日 公開
2023年01月11日 更新
──各種のイベントも竹本社長の発案ですか?
竹本 自分でも色々考えますが、寺井さんはじめ外部の方々の発案によるものもあります。
寺井 ネーミングライツパートナー企業との共催でUFO召喚イベントもやりましたよね。
竹本 翌日のスポーツ新聞にも「銚子にUFOが」って載りました。私もアダムスキー型UFOを1機発見しました(笑)。
──「鉄道会社が何をやっているんだ」という批判を受けることはないのですか。
竹本 もちろん、そういう声はあります。ただ、我々の目指すものは「鉄道の存続」。ぬれ煎餅を売るのも、イベントをやるのも、すべては鉄道の存続のため。そこの軸はぶれていません。
そもそも、規模が小さく資金もない我々が、大会社と同じことをやっても勝てません。こうした「ゲリラ・マーケティング」を徹底することで、生き残りを図っています。
寺井 むしろ今ではJR各社も、物販など鉄道以外のビジネスを強化していますよね。
竹本 半分お世辞でしょうけど、JRの方から「銚子電鉄から学んだ」と言っていただいたこともありました。
──そんな銚子電鉄の新たなチャレンジである「映画」。クラウドファンディングでの資金集めも見事、目標の500万円を達成されましたね。どんな作品になるのでしょうか。
竹本 目指したのは「笑って泣けるホラー」です。鉄道存続にかける我々の思いを伝えつつ、ヒューマンドラマとしての完成度にもこだわりました。
寺井 電車という舞台を最大限利用しているという意味でも、他に類のない作品になっていると思います。電車の中を舞台にしたパニック映画って、意外とあるようでなかった。
竹本 ここ最近、参考のためにホラー映画ばかり観ているんです。早く完成させないと、人格が破壊されそうですよ(笑)。
──寺井さんの原作小説では、SNSが大きな役割を果たしています。銚子電鉄が全国的な注目を集めるきっかけもまた、ネット上での動きでした。
竹本 おっしゃるように、2006年に電車の修理代が足りずに困っているとき、当時の経理課長がホームページに「ぬれ煎餅を買ってください」「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」というキャッチコピーを……というより、悲痛なお願い文(笑)を掲載したことが話題となって、オンラインショップに全国から注文が殺到したのです。そのおかげで今があります。ネットの向こうにいるのも我々と同じ人なんだ、という当たり前のことに気づかされました。
寺井 原作小説では、列車内で起こることとSNSとが同時並行で進んでいくのも特徴です。ただ、原作と映画の内容は結構違っているので、比べていただくと面白いと思いますよ。特にラストは……と、これ以上は言わないほうがいいですね。
──竹本さんと寺井さんは、共著にて本を出されたとか。
寺井 タイトルは『崖っぷち銚子電鉄 なんでもありの生存戦略』(イカロス出版)。ぜひ、『電車を止めるな!』ともどもお読みいただければと思います。
竹本 『電車を止めるな!』の帯の裏に書いた私の推薦コメントもぜひ読んでください。
寺井 これが全然推薦になっていないんですよね(笑)
(写真撮影:長谷川博一
『THE21』2019年8月号より)
竹本勝紀(銚子電気鉄道株式会社代表取締役社長)
1962年、千葉県木更津市生まれ。慶應義塾大学卒。税理士。銚子電鉄顧問税理士、同社社外取締役を経て、2012年代表取締役に就任。以来、約20名の社員とともに経営再建に向けて奔走を続けている。16年には電車の運転免許を取得。また、千葉科学大学非常勤講師として財政学、マーケティング論を担当。
寺井広樹(文筆家)
同志社大学卒。怪談の蒐集や超常現象の研究をライフワークとしている。『日野日出志 泣ける! 怪奇漫画集』(イカロス出版)、『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版)など著書は50冊を超える。文筆業のかたわら、地方創生事業に進出し、企画プロデュースした「お化け屋敷電車」「まずい棒」が話題に。
更新:11月25日 00:05