2019年06月25日 公開
2019年06月25日 更新
6月は株主総会シーズン。企業の「決算」に注目が集まる時期だ。だが、そもそも決算書のどこをどう見ればその企業の状況を正しく判断することができるのか、正しく理解している人はそれほど多くはないだろう。
経理の本としては異例のシリーズ60万部を発刊した『決算書がおもしろいほどわかる本』の著者として知られ、近著『ざっくりわかる「決算書」分析』にて決算書分析のイロハを解説した公認会計士の石島洋一氏に、決算書分析の「要点」についてうかがった。
決算書の分析にはさまざまな視点がありますが、最も多くの人が気にしているのが「安全性」と「収益性」の2つだと思います。
「儲けたい」
「潰れたくない」
企業経営をする人にとって、この2つの思いは絶対に必要なものだからです。
同時に、株式投資をする人や企業の利害関係者にとっても不可欠な観点です。
「この企業は収益性が高いか、儲かっているか」
「この企業の安全性(流動性)はどうか、潰れることはないか」
これは、自社の安全性や自分の儲けにダイレクトにつながります。
だからこそ、決算書の分析をする時、この「収益性」と「安全性」に対する観点は非常に重要なのです。
とはいえ、収益性と安全性は無縁のものではありません。それどころか、非常に密接な関係を持っています。
収益性が高く、儲かっている会社は安全性が高いのが普通だからです。
それなら、収益性だけで経営力の判断ができそうですが、そうそう単純でもないのです。収益力があれば絶対に潰れない……。残念ながらそんなことはないのです。
収益力が高い=利益が多い会社であっても、倒産の危険性はあるのです。
なぜか。そもそも、「儲けとは何か」を考えてみる必要がありそうです。
まず、売上について考えます。帳簿に売上があったことを示すのはいつでしょうか。
最もわかりやすいのは、売上代金を現金でもらった場合ですが、現代の会計では、現金の授受の時に売上を計上する方法(現金主義)を否定しています。
今日の経済は、信用経済を前提にしています。小売業などを除けば、商品は渡すけれども代金は後でまとめて、という方式が多いのです。
売上は、お客様に商品を引き渡した時に帳簿に計上するのが普通です。代金を受け取った時ではありません。ですから、売上を計上し、そのことによって利益が発生したとしても、現金があるという保証はないのです。
つまり、売上の計上時期と現金の入金時期がズレているのです。
「勘定合って銭足らず」という言葉があるように、利益があることは、現金があり潰れない(安全性)こととは同じではないのです。
更新:11月22日 00:05