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上司も部下もない「ティール組織」がなぜ増えているのか?

2019年07月05日 公開
2023年03月02日 更新

吉原史郎(Natural Organizations Lab社長)

 

役割はあっても役職はなく助言はあっても指示はない

 では、ティール組織とは、どういうものなのか。私は、ひと言で言えば、「心と頭の循環が良い組織」だと答えています。

 ティール組織の特徴の一つ目は、組織の目的を固定的なものではなく、変わり続けるものと捉えていることです。これを「エボリューショナリーパーパス(進化する目的)」と呼んでいます。

 固定的な中期経営計画は必要なく、進化する目的がメンバー全員の意思決定の拠り所になっています。前提として、メンバー個人の目的と組織の目的が、少しでもいいので、共鳴していることが大切です。

 ティール組織では、組織の目的を実現するために、通常はマネジメント層に集中している権限が組織内に分散されていて、チームや同僚の関係性をベースにした集合知が発揮されます。

「役職」はなく、上司も部下もありません。社長も「対外的な組織の顔」、「視野の広い仕事の実施」、「自社の慣行や文化の体現者」などの役割を担っている一人のメンバーです。

 具体的な運営方法は各社各様です。チームをベースにしている組織の場合だと、経営層や本社スタッフを最小化し、それぞれのチームが意思決定や相互扶助をできる環境や仕組みを作って、日々、更新しています。

 チームに関するルールを設けることはありますが、経営者が指示を出すことはありません。

 チームにもリーダーなどの役職はなく、メンバーそれぞれが担当する業務について意思決定をする権限を持つ「自主経営」を行ないます。これが、ティール組織の特徴の二つ目です。      

 あるメンバーの意思決定が他のメンバーに影響するような場合には、それに対応できるプロセスが必要です。そこで、業務上、他のメンバーに関わる意思決定をする場合には、関係するすべてのメンバーとその問題の専門家に「助言」をもらわなければいけません。そして、意思決定の際には、すべての助言を組み込む必要はないのですが、真剣に検討しなければいけません。これは「助言プロセス」と呼ばれています。

 また、自主経営を実現するには、すべての社内情報が全社員にオープンであることが不可欠です。

 先ほど、ティール組織とは「心と頭の循環が良い組織」だとお伝えしましたが、これまで述べてきたような運営方法が、「頭の循環」を高める重要な要素です。

 

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著者紹介

吉原史郎(よしはら・しろう)

Natural Organizations Lab〔株〕代表取締役社長

1982年、兵庫県生まれ。神戸大学経営学部卒業後、2006年に証券会社に入社。07年に〔株〕リサ・パートナーズに入社し、大規模リゾートホテルの総支配人として事業再生業務に従事。11年には三菱UFJリサーチ&コンサルティング〔株〕に入社し、大企業向け調査プロジェクトやM&Aアドバイザリー業務、組織開発を通じての「成果の創出プロジェクト」などを経て、17年にNatural Organizations Lab〔株〕を設立。自然からの学びを活かした経営の伴奏支援をしている。著書に『実務でつかむ! ティール組織』(大和出版)がある。

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