2019年06月07日 公開
2022年10月25日 更新
――今後のさらなる成長のためには、どんなことを考えていますか?
髙宮 当社の設備投資は、18年3月期を境に抑制しました。東京オリンピック・パラリンピックの前に2年間の回収期間を設けないとリスクがあると感じたからです。
どの大会を見ても、オリンピックのあとは景気が減速します。東京大会でもそうなるでしょう。その局面での成長要素は海外にあると、5年ほど前から考えていて、東南アジアを中心に、海外売上げの比率を上げる取り組みをしています。
一方、国内においては、より一層の効率化や高付加価値化を進めていきます。19年3月期から3カ年の中期経営計画では、これを徹底します。
私が「次世代足場」という言葉を作ってIqシステムに投資を始めた当初は、社内でも否定的な声が多かった。「償却済みの足場を全部処分して、ビジネスが成り立つわけがない」というわけです。同業者も「できるわけがない」と言っていました。
それでも当社はやってみせました。これまで業界の誰もしなかったことですが、「全国で足場は約8,000万平米あって、そのうち約2,000万平米は既に次世代足場になっている」「3年後には約4,000万平米にまで広がる可能性がある」「次世代足場のうち、3割のシェアを当社が取っている」など、手の内を明かすような情報開示もしています。すると、同業者も乗り遅れまいと次世代足場に参入してきて、市場が広がっています。お客様からも「次世代足場がほしい」と言われるようになっているので、参入せざるを得ない状況です。
当社は次世代足場市場のパイオニアであり、設備投資を終えているうえに、メーカー機能も持っていますから、後発でメーカーも持っていない他社よりも、価格面でも優位に立っています。当社の価格に合わせると、他社はとても利益が出ない状況です。
それで、他社から苦情を言われましたよ(笑)。「こんなに安い価格では業界が潰れる」と。業界を発展させたいとの思いでやっていることなんですけどね。価格を上げることにしたのには、こういう背景もあります。
――最後に、髙宮社長ご自身についてもお聞きしたいと思います。お父様の跡を継がれた2代目ですが、もともと会社を継ぐつもりだったのですか?
髙宮 最初は嫌でしたけど、勝手に決められていて、そうするより他にありませんでした。特に抵抗もなく、腹を括っていましたね。
――継がれたときから、新しいビジネスをしようという想いはあったのでしょうか?
髙宮 当時はありませんでした。バブル崩壊やリーマン・ショックで会社の危機を経験したことで、会社というものは常に新しいイノベーションを起こしていないと価値がなくなっていくのだと感じるようになりました。
イノベーションを起こすのは人ですから、当社は、バブル時代からずっと、採用も変わらずやっています。景気が悪くて、世の中の他の企業が採用を控えている年ほど、優秀な人材が採用できますよ(笑)。設備投資も、景気が悪いからといって控えることはしてきませんでした。投資は先のことを考えて行なうものであって、景気や業績に合わせて行なうものではありません。
建設業界は、ここに来て追い風が吹いていますが、20年間ずっとアゲインストでしたから、メンタルも含めて、ずいぶん鍛えられました(笑)。
《写真撮影:長谷川博一》
更新:11月25日 00:05