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しぐさや振る舞いで損をしない「身体コントロール」の技術

2019年05月28日 公開
2023年03月02日 更新

荒木シゲル(マイム・アーティスト)

 

プレゼンの重要な場面では手の位置を高くする

 余裕があれば、手の動きも意識するといいでしょう。

 両手を差し出しながら話すなど、手の距離を相手に近づけると、「私はあなたに心を開いています」という自己開示を表現できます。逆に、手をテーブルの下などに隠していると、自分の心が相手に対してオープンではなく、緊張したり警戒したりしている印象を与えます。

 相手と対等に会話したい場面では、手はテーブルの上に出して軽く組むくらいが自然です。

 また、手の高さでも印象が変わります。

 手が高い位置にあるとテンションが高く、低い位置にあるとテンションが低い印象になります。通常の会話のときは手を低めの位置に保ち、重要なことを話すときは手を高めの位置に上げると、自分がその内容を強調したい気持ちが伝わります。

 プレゼンや商談などで「ここぞ!」というポイントが来たら、両腕を開いて高い位置に上げたり、手を高く上げてスライドを指し示すポーズを取ったりする効果的です(写真14)。

 なお、手の組み方でもステイタスを変えられます。両手を小さく握るように組むと、空間が小さくなるので、ステイタスが低くなります(写真15)。一方、ステイタスを最大に高めるのが、両手の指を伸ばして合わせる組み方です。この直線的な動作は「尖頭のポーズ」と呼ばれ、より高いステイタスを表現します(写真16)。

 高い専門性が求められる医師や弁護士の中には、「すごい人だ」という印象を相手に与えるために、意識的にこのポーズをとる人が多くいます。一般のビジネスパーソンでも、自分の専門領域について説明するときや、自社の強みをアピールしたいときなどは、応用が可能です。

 ただし、相手より自分のステイタスが高くなるので、目上の人や顧客に対して使うときは注意してください。

 

身体や髪を触るとごまかしている印象に

 このように、手も動かし方で色々な気持ちを表現できる大事なパーツです。だからこそ気をつけたいのが、余計な動きをしないこと。

 行動心理学では、居心地が悪かったり、後ろめたい気持ちがあったりすると、手が余計な動きをすることが知られています。自分の髪や身体を触ったり、時計を触ったりするのが代表的で、これを「なだめ行動」と呼びます(写真17)。

 もし、商品を説明しているときや上司に報告をしているときに身体や髪を触っていたら、「何かごまかしている」という印象を相手に与えてしまいます。ですから、ビジネスの場では、こうした余計な手の動きはできるだけ控えるように心がけてください。

「自分の身体の動きを意識する」と言われても、最初は難しいかもしれません。でも、意識さえすれば、相手の反応を見て、「今の動作は何かおかしかったのかも」と気づいて修正できます。鏡を見ながら自分のしぐさを確認するのも、良い練習になるでしょう。

 

《取材・構成:塚田有香 写真撮影:まるやゆういち》
《『THE21』2019年5月号より》

著者紹介

荒木シゲル(あらき・しげる)

マイム・アーティスト/身体表現コンサルタント

1969年生まれ。千葉県出身。高校卒業後、英国の美術大学に留学。卒業後はデズモンド・ジョーンズに師事し、パントマイム・アーティスト、俳優として活動。98年に帰国後は、CGキャラクターアニメのアドバイザーとして映像やゲーム製作に関わる。また、ヒューマノイドロボット研究者が集まる「デジタルヒューマン・ワークショップ2005」、国内外のCGクリエイターが集まる「シーグラフアジア2009」、スイス・チューリッヒ大学のシンポジウムなどで身体表現に関する講演を行なう。現在は、即興演技やパントマイムを取り入れたコミュニケーションセミナーを企業や学生向けに開催。著書に『しぐさの技術』(同文舘出版)がある。

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