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「デキる社員」が、企業を滅ぼす!?

2019年04月18日 公開
2023年03月09日 更新

柴田昌治(スコラ・コンサルトプロセスデザイナー代表)

「効率」だけを重視する組織に未来はない

調整力がある、大量の仕事をそつなくさばく、上司の期待に応える──。一見、優秀な人材に見えるが、こうした仕事の仕方をする人こそが、働き方改革を阻害する可能性がある。そう警鐘を鳴らすのは、組織風土改革の第一人者として、数多くの職場をコンサルタントしてきた柴田昌治氏だ。一体、なぜ優秀な人材が障害となるのか。その理由と改善策を解説してもらった。(取材・構成:長谷川敦/写真撮影:長谷川博一)

※『THE21』2019年4月号より一部抜粋・編集したものです

 

「意味のない仕事」をやめられない理由

中間管理職、とりわけ課長クラスの人たちには、日々たくさんの仕事が降りかかってきます。中には、「すでに意味を失った仕事を、惰性でこなしている」人もいるのではないでしょうか。

目の前の仕事をさばくのに精一杯で、本当にやるべき仕事に力を注げない。その結果起きているのは、個人の疲弊と日本企業の低迷です。日本企業が世界の時価総額ランキングで上位を独占していたのも今は昔。現在では、アメリカや中国の企業の後こう塵じんを拝しています。みんなクタクタになるまで働いているのに、新たな価値を生み出す余裕がないのです。

実際は、多くの日本企業が、「今までの働き方に未来はない」ことに気づいています。でも、経営陣も現場も、どう変わればいいのかわからない。だから、すでに通用しないとわかっているビジネスモデルや非効率な仕事の進め方をするのをやめられない。ミドル社員は今日も働き方を変えることなく、疲弊した現場を調整し、大量の仕事をさばき続けます。

ただし、これはせっかく顕在化した問題を先送りしていることに他なりません。仕事をさばくのが上手な人は、ひと昔前は組織人として優秀だとみなされていましたが、今の時代では一歩間違えればただの思考停止です。「仕事をさばく職人」が増えると、自部門の利益しか考えない部分最適にはまり、全体最適を考える思考力が低下します。こうした人材が上に行くことほどの悲劇はありません。働き方改革が進まないどころか、組織全体の衰退の後押しに拍車をかけていることを理解すべきでしょう。

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著者紹介

柴田昌治(しばた・まさはる)

スコラ・コンサルト プロセスデザイナー代表

1979年、東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。
1986年に、日本企業の風土・体質改革を支援するためスコラ・コンサルトを設立。これまでに延べ800社以上を支援し、文化や風土といった人のありようの面から企業変革に取り組む「プロセスデザイン」という手法を結実させた。社員が主体的に人と協力し合っていきいきと働ける会社をめざし、社員を主役にする「スポンサーシップ経営」を提唱、支援している。2009年にはシンガポールに会社を設立。
著書に、『なぜ会社は変われないのか』『なぜ社員はやる気をなくしているのか』『考え抜く社員を増やせ!』『どうやって社員が会社を変えたのか(共著)』(以上、日本経済新聞出版社)、『成果を出す会社はどう考えどう動くのか』(日経BP社)などがある。

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