2019年02月24日 公開
本社オフィスがなく、36人いる社員たちは15都道府県にまたがってリモートワーク。管理職も評価制度もなく、給与は一律、賞与は山分け。売上げ目標やノルマもなし。それでいて、2011年の創業以来ずっと増収を続けているシステム開発会社、〔株〕ソニックガーデン。その創業社長で、『管理ゼロで成果はあがる』(技術評論社)などの著書がある倉貫義人氏に、仕事の質とスピードの両方を上げる方法を聞いた。
当社はシステム開発などを行なっている会社です。製造業なら、利益を大きくするために製造原価を下げるという方法が取れますが、システム開発はそもそも製造原価がかかりませんから、それができません。利益の源泉は労働生産性しかない。そこで、社内ベンチャーとして創業して以来、労働生産性を高めるための工夫を続けてきています。ここでは、その経験をもとに、仕事の質とスピードの両方を上げるためのポイントを7つ、ご紹介したいと思います。
まず重要なのは、「仕事」と「作業」は違う、ということを認識することです。混同している人が多いのですが、例えば、カレーを作るのは「仕事」で、そのためにニンジンを切るのは「作業」です。仕事には価値がありますが、作業には、単体では価値はありません。
作業自体に価値はないのですから、同じ仕事をするのなら、作業を減らしたほうがいい。作業を多くすることが良い仕事につながると思っている人がいますが、それは生産性の低い働き方です。
そして、作業を減らすうえでのキーワードが、「そもそも」です。
「この資料を50部コピーするように」と上司から指示されて、「はい、わかりました!」とすぐにコピーに取りかかる人は、「そもそも」を考えていません。「そもそも、なんのためにコピーするのだろう?」と考えて、それを上司に聞くべきなのです。
すると、目的は「明日の会議で資料として配布するため」だということがわかるかもしれません。そうすれば、「コピーするよりも、プロジェクターで投影したほうがいいのではないでしょうか」と提案することができます。そのほうが作業の時間が少なくて済む、つまり、時間対効果=コスパ(コストパフォーマンス)が良いはずです。
これは、上司に対してだけでなく、顧客に対しても同じです。顧客が「こうしてほしい」と要望する背景には、何か目的があるはずです。その目的を達成するためには、顧客が知らない、もっと良い方法があるかもしれません。ですから、「そもそも、なぜ、そうしてほしいのか」を尋ねて、目的がわかれば、顧客が期待していた以上の提案ができるかもしれない。私はこれを、「受託脳」から「提案脳」に変える、と表現しています。
システム開発の例で言えば、「アンケートを取るシステムを作ってほしい」と言われたとき、どんなアンケートを取るのかという目的を確認し、「それならGoogleフォームを使って無料でできますよ」と提案する、というようなことです。Googleフォームを知らなかった顧客は、喜ぶに違いありません。
もしあなたが上司の立場なら、部下に指示をしたとき、「そもそも、なんのためにやるのですか?」と尋ねられると、一瞬、カチンと来るかもしれません。しかし、それは生産性を上げるチャンスです。できれば、部下が委縮せずに「そもそも」と尋ねられるよう、「そもそも」を考えるべきだというチーム内のコンセンサスを取っておくといいでしょう。
更新:11月21日 00:05