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「ロジカルシンキング」は世界の共通言語だ!

2019年03月11日 公開
2023年07月12日 更新

細谷功(ビジネスコンサルタント)

論理的に話すためには「全体像の共有」が必須

一方で、「論理的ではない」とはどういうことかを知っておくことも重要です。

代表的なのが、「全体を見ず、部分だけを見ている」というケースです。

会社の上層部にプロジェクトの報告をするとき、「このプロジェクトは会社全体の中でどのような位置づけで、どのような経緯で始まったのか」という「全体」を説明せず、いきなり「今日はこんなことがあった」という「部分」から話してしまうのは、典型的な例です。聞く側は、「なんの話をしているかわからない」と感じてしまいます。

なぜ「全体」を押さえることが必要かといえば、「全体=客観」「部分=主観」だからです。

「全体」とは、全ての人にとって一つです。例えば、動物の象の全体像を見れば、誰もが「象とはこういう姿形なのだ」と共通の客観的な認識を持ちます。

ところが、もしある人は象の鼻だけ見て、ある人は象の尻尾だけ見たら、「鼻」や「尻尾」がその人にとっての「象」になります(上図参照)。この場合、鼻だけを見た人と尻尾だけを見た人が、「象とはこういうものだ」と議論しても、話は噛み合いません。

 

思うままに書き出すと陥りがちな落とし穴

物事の全体像を掴むのに役立つのが、ロジックツリーです。一つの全体像を複数に分解し、それをまた複数に分解していくことで、「全体」と「部分」の関係性を整理できます。「根っこ」になる一つの箱を必ず作ること、

そこから分岐して並ぶ箱は「MECE(モレなくダブリなく)」であること、同じ階層に並ぶ箱は「言葉のレベル(言葉や概念の階層)」が合っていることが、作る際のポイントです。

ロジックツリーは、「全体」から「部分」へと分解していく「トップダウン型」が原則です。よくある間違いが、先に「部分」を書き出して、そこから「全体」を見出す「ボトムアップ型」で作ってしまうこと。まず自分の思いつきを書き出し、それを箱で囲って無理にツリー型に近づけただけなので、ツリーの外側に自分が思いつかなかった要素が漏れている可能性があります。また、箱が階層ごとにきれいに並ばず、「言葉のレベル」が合わないのも問題です。

例えば、「ファミレスの売上げを向上するには、どの顧客に注力すべきか」を考えるとします。ボトムアップ型で「中国人」とか「朝食を食べに来る人」とか「ハンバーグが好きな人」といったアイデアを思いつくまま書き出していくと、言葉のレベルが合いません。「中国」は「出身エリア」で、「朝食」は「来店の時間帯」で、「ハンバーグ」は「メニュー」ですから、カテゴリーが全く違います。もしこの状態で話し合っても、議論の軸がないため永遠に決着がつきません。

一方、先にロジックツリーで空の箱を作り、階層ごとにきれいに並べてトップダウン型で分解していけば、自然と言葉のレベルは合います。

この場合なら、根っこの箱に「ファミレスの客」が入ります。そこから次の階層で三つの箱が並んでいたら、どんなに論理的思考が苦手な人でも、いきなり「中国人」「朝食」「ハンバーグ」とは書かないはずです。つまりロジックツリーという形から入ることで、モレなくダブリなく全体像を掴みやすくなるのです。

 

<『THE21』2019年3月号より>

著者紹介

細谷 功(ほそや・いさお)

ビジネスコンサルタント

1964年、神奈川県生まれ。東京大学工学部を卒業後、東芝を経て日本アーンスト&ヤングコンサルティング(現、㈱クニエ)入社。2012年より同社コンサルティングフェローに。ビジネスコンサルティングの傍ら、講演やセミナーを多数実施。『「Why型思考」が仕事を変える』『メタ思考トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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