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社員の仲の良い会社は、殺伐とした会社に負ける……その根本的な理由

2019年01月22日 公開
2023年07月03日 更新

神田昌典(経営・マーケティングコンサルタント)

年輪経営に立ち塞がる、成長の壁

ところが、近年ではこのような「年輪経営」だけを唯一の道と信じていると、成長の壁にぶつかってしまうケースが目立ち始めた。

売上や利益の規模を拡大しようと、どんなに頑張っていても、今までの延長線上では、低収益体質に陥ってしまうのだ。

その原因は何か。

大きな理由の一つは、昔に比べて、コンテンツやプロダクトが高く売れなくなったことだ。

今や情報はネット上にあふれているので、わざわざお金を出さなくても、必要なノウハウはある程度手に入る。またネットで探せば、全世界から最安値で取り寄せられるプロダクトも多いため、どんなに高い商品力があっても、そのブランド管理が行き届いていなければ、顧客はお金を払ってくれなくなっている。

加えて、もう一つ大きな理由として挙げられるのは、ビジネスモデルが進化すればするほど、商品数や業務が増え、利益が増える以上に、経費がかかるようになることである。

顧客満足度を上げるため、顧客の要望に丁寧に応えようとすると、どうなるか。商品やサービスの数は自然と増えていき、一方で一つひとつの商品の売上は減っていく。つまり、多品種少量生産になっていく。

すると、業務が煩雑になり、従業員を増やさなければ回らなくなるわけだが、ここに落とし穴がある。人を増やした結果、教育に時間がかかったり、できない人の分のフォローを仕事ができる社員がしなくてはならなくなったりなど、生産性が下がってしまうことが多いのだ。

 

「忙しすぎる社長」はなぜ生まれる?

また、コミュニティ型ビジネスにおいては、顧客とのやり取りを密に行う必要が出てくるが、それには単純に人を増やすだけではダメで、おもてなしの心を持ったスタッフを育成することが欠かせない。

こうなると、大変なのは社長である。最近は組織のフラット化が進んだこともあり、増えた業務の多くを社長が決裁しなくてはならなくなった。しかし、社長といえども、たくさんの決裁事項を一気に判断するのは難しい。

その結果、社長の仕事が滞って、社内が大渋滞を起こす。現場のスケジュールは混乱し、残業は常態化し、その残業代で会社の収益は悪化。これでは、社内の雰囲気が悪くならないほうが不思議だ。

そこで、会社の雰囲気を良くしようと、福利厚生に力を入れたり、社員旅行をしたり、地域貢献活動をしたりするわけだが、そうすると、さらに人件費などのコストがかさんでしまう。

こうして、売上や利益を求めるほど、会社の収益性はどんどん低下していく。こんな善意による悲劇が、日本の至るところで起きている。

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著者紹介

神田昌典(かんだ・まさのり)

経営・マーケティングコンサルタント、作家

上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士(MA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済局に勤務。その後、米国家電メーカー日本代表を経て経営コンサルタントとして独立。多数の成功企業やベストセラー作家を育成し、総合ビジネス誌では「日本のトップ
マーケター」に選出。2012年、大手ネット書店の年間ビジネス書売上ランキング第1位。ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。
主な著書に『2022――これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)、『ストーリー思考』(ダイヤモンド社)、『成功者の告白』(講談社)、『非常識な成功法則』(フォレスト出版)など多数。
アルマ・クリエイション株式会社代表取締役。一般社団法人Read For Action代表理事。

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