2019年01月11日 公開
2023年05月16日 更新
「フランスが海洋帝国になれなかったのはなぜか」
全編にわたってそんな著者のフラストレーションが爆発しているのが本書です。
有史以前から古代ギリシャ、ローマ、大航海時代を経て現代まで続く海を巡る世界の覇権争いが描かれるのですが、その合間合間に、チャンスを逃し続けるフランスの「やらかし」が、さも残念そうに描かれます。
確かに、通常の世界史ではフランスについてかなりの紙幅が割かれるものですが、「海」を中心に描かれる世界史においては、フランスの占める割合は相対的に低いです。とはいえ、フランスにも海洋帝国になるチャンスは幾度もあり(アタリによれば6回)、それをことごとく逃し続けた結果、今に至る、ということなのです。
たとえば蒸気船を最初に走らせたのは実はフランス。ただ、結局フランスではほとんど注目されず、他国がその技術を真っ先に利用することになった、など。
フランスという国は国土が豊かなので、海に乗り出さないといけないという危機感がなかったからかもしれません。
そんなフランス目線から歴史を見るのも、なかなか面白いものです。
ちなみに本書は前半が海を巡る歴史の物語で、後半では、経済において海がどのような役割を果たしているかが描かれます。
アタリは元々経済学者であるだけに、はっきり言って後半のほうが面白いですが、ぜひ彼の心の叫びを聞いてやっていただければと思います。
執筆:Y村
更新:11月22日 00:05