2018年11月02日 公開
映画監督と女優/映画監督。
グラフィックデザイナーと小説家。
建築家と建築家。
小説家と小説家。
演劇作家とアーティスト。
日本と韓国で活躍する20代から40代の若手文化人5組の対談をまとめた1冊。
日本と韓国、それぞれ2回ずつ行なわれた対談と、2人が交わした手紙でそれぞれが構成されている。
同じ、もしくは似たような分野の第一線で活躍する方々の話の中から、お互いの国のリアルな事情が垣間見られ、それぞれの日本方の対談者と同じように、読み手としても納得するところあり、新しい発見あり。
また、対談は2014~17年の間に行なわれているが、現代において、映画なり小説なりをどう作っていくのかの考察も興味深い。それぞれの分野で活躍する方々の話だけに、日本の映画界なり小説界なりが抱えている事情や問題なども、当事者から直接教えてもらっているような気分になる。実際に講演した対談をまとめているから、余計にリアリティがあるのかもしれない。
個人的にグッときたのは、小説家・朝井リョウ氏のこの言葉。
『私は共感できない本に出会うと、自分の輪郭が少し変わった気がしてうれしいんです。自分の知らない考え、まだ辿りついていない何かがある気がして、もっと読んだり、知りたくなったりしますから。「共感できない」と思ってそこで本を読むのをやめてしまうと、自分の形が一切変わらないまま年齢を重ねてしまうんじゃないかと思っています。』
本だけでなく、自分の考えと違うから、共感できないからと、そこで考えることや知ろうとすることをやめてしまうことは多々あるもの(それどころか、近年はそれを批判することもしばしばある)。
自分の知っているもの、心地良いもので回りを固めれば安心はできる。それは決して悪いことではないけれど、何かのチャンスを逃していることでもあるのだ。
特に年齢を重ねるとどんどん守りに入ってしまう。「知らないこと」に出合うことを楽しみ、「共感できないこと」の先にあるものを見つけにいく気持ちを持ち続けていたいものだ。
本書を読んで改めて、日本と韓国の似ているところと違うところがわかった気がする。けれどこれは、対話した二人の中から生まれた気づきでもある。
日本人と韓国人だけでなく、皆が、様々な人たちとの個々の対話などを通して、自分なりの気づきや「共感できないこと」の先にあるものを見つけられれば、世の中はもっと楽しくなっていくだろうなぁと思う。
執筆:K
更新:11月22日 00:05