2018年11月10日 公開
2023年03月14日 更新
経験がない人に仕事を任せれば、失敗はつきもの。しかし、失敗を厳しく指摘すると萎縮してしまい、能力を発揮できなくなります。
米国の化学メーカー・3Mには「キャプテンは血が出るほどに舌を噛む」という格言があるそうですが、上に立つ人は、それぐらいギリギリまでモノを言うのを我慢するべきです。
凡ミスを犯した部下に対しても、感情を表に出して強く叱ると、良いことはありません。冷静にひと言だけ言うぐらいのほうが効果的です。
これは私の例ですが、あるとき、クライアントを激怒させた部下がいました。こちらの完全な不手際でした。私も彼女に同行して、クライアントのもとへ謝罪に行くことになりました。
一般的には、強く叱っても仕方のない状況だと思いますが、私はそうしませんでした。「今回のことは重く受け止めてね」と、ひと言だけ言ったのです。
すると、その部下は真摯に反省し、翌日から人が変わったように仕事に対する姿勢を改めて、ものすごく成長しました。
実は、私自身も新人時代に同じような経験をしたことがあります。私が作ったプレゼン資料について、クライアントから間違いを指摘されたのに、当時の上司はひと言も私を責めなかったのです。そのとき、「二度とこの人に恥をかかせてはいけない」と強く思ったことを、今でも覚えています。
上司の仕事は、部下のモチベーションを高めること。それを念頭に置けば、感情的に叱ることは無意味だとわかるはずです。
部下にやりたい仕事やキャリアビジョンを聞くと、それが本人には向いていないように思うこともあるはずです。
その場合は、必ず部下の意向を汲み取りながら、上司の考えを伝えるようにしましょう。「言いくるめようとしている」と感じられたら、聞く耳を持ってもらえません。客観的な視点を忘れないようにしてください。
また、部下のやりたい仕事をさせるためには、他の部署に異動させたほうがいいケースもあると思います。場合によっては、転職が必要かもしれません。
そのときは、上司が異動の手助けをしたり、転職を勧めたりしたほうがいいと、私は考えています。なぜなら、やりたくない仕事をムリにさせても、成果が上がらないからです。
自分の部下が減ることで業務がキツくなるかもしれませんが、親身になって部下に接する姿勢を見せれば、他の部下からの信頼が高まります。長い目で見れば、上司自身にとってもプラスに働くはずです。
《取材・構成:杉山直隆 写真撮影:永井 浩》
《『THE21』2018年12月号より》
更新:11月22日 00:05