2018年04月19日 公開
2023年03月23日 更新
新卒から70歳まで働くとすると、 45歳がちょうど折り返し地点。この連載では、70歳までのキャリアを見越した働き方と生き方について、リクルートを経て40代から民間校長として教育の世界に新たな挑戦を始めた藤原和博氏にアドバイスをいただく。最終回となる今回は、これからの時代に必要な「信用度」とその測り方についてうかがった。《取材・構成=甲斐ゆかり(サードアイ)、写真撮影=清水茂》
この連載では、45歳というキャリアの折り返し地点で考えるべきことについてお話ししてきました。最終回となる今回お伝えしたいのは、変革する時代を生き抜く中でもっとも重要になる「信用度」についてです。
世の中には「信用される人」と「信用されない人」とがいます。人は、「あの人の言うことは間違いない」と、理性によって相手を「信頼」し、また「彼(彼女)の取った行動はもっともだ」と、感情面で「共感」することによって、相手を「信用」します。つまり「信用」とは「他者から与えられる信頼と共感の関数」と定義することができます。仕事で言えば、他者からの信用が大きければ大きいほど、より重要なミッションを任せられる可能性が高まり、裁量の範囲や自由度も拡がっていくのです。
もし、この「信用度」をパーセンテージで示すことができるとすると、たとえば信用度0%の人が事業を始めたとしても、元手となる資金を貸してもらうことや、必要な人材を紹介してもらうことなどは難しいでしょう。逆に信用度100%の人なら、場合によっては、投資の申し込みが次々に舞い込むかもしれません。もっと身近なことで言えば、困ったときに相談したり助けを借りたりしたいのは信用度30の人よりも70の人ですし、逆に助けてあげたいのも後者でしょう。
つまり、信用される人の方が人生の自由度がより高く、何かと有利であるといえます。キャリアを積んで自分の目標やビジョンを実現させるには、できるだけ信用度を上げるよう、努力することが必要なのです。
では、「信用度」とは、一体何によって決まるのでしょうか。資産や年収や役職といった金融的な尺度でしょうか。それ以外の何らかの判断基準でしょうか。
先日、高校生を相手に、さまざまな尺度が個人の信用度にどれだけ関わるかを考える授業をしました。 たとえば、新学期の身体測定で測る「身長」。大人から見ると、身長と信用度に何の関連があるのかと言いたくなりますが、バスケットボールやバレーボール部の部員たちにとっては、高身長だと「あいつは強そうだ」という信用度につながります。
一方、「体重」はどうでしょう。こちらも信用度とはあまり関係なさそうに思えますが、生徒から「健康食品を売る仕事の人が太っていたら、信用できない」という、非常にいい意見が出ました。実際にアメリカでは、体型と信用度は密接に関係し、太っている人は自己管理ができない人と見られることがあります。 今の日本で中年たちがこぞってジムに行き、身体を鍛えているのは、実は、「健康」を手に入れているのではなく、「信用」を買っているのかもしれません。
他にも例を挙げると、政治では「得票数」が重要なポイントです。企業なら「時価総額」、作家なら「部数」です。つまり「信用度」は場面によって変わるもので、金融的な側面以外のいくつもの尺度によって多面的に測定され、判定されるものだと考えられます。
更新:11月21日 00:05