2018年10月15日 公開
2023年07月03日 更新
年間約8万冊発刊される書籍。あまりにも膨大な本の中から、ビジネスパーソンが今読んでおくべき本を、経営コンサルタントの神田昌典氏とビジネス書評家の土井英司氏に選んでいただいた。
知らないと恥ずかしい世界の常識を学べる本から、固定観念として植えつけられている「世間の常識」を疑う本まで、知識を身につけ、教養を磨ける本を紹介する。
『トレバー・ノア 生まれたことが犯罪!?』
トレバー・ノア著 齋藤慎子訳
英治出版/1,944円(税込み)
「今起こっていること」への問題意識
アパルトヘイト下の南アフリカで生まれ、現在米国で活躍する人気コメディアンの自伝。異人種間の婚姻が“犯罪”だった時代に、黒人の母と白人の父の間に生まれた著者が、母とともにユーモアで苦難を乗り越えた体験を語る。
「教養とは何かと考えると、アカデミックな知見も大事だが、実は目の前で起こっていることに問題意識を感じられることが教養のある人間の証ではないか。私たちは異人種間の婚姻を罰することがいかに馬鹿げたことかを誰もが理解できるが、当時、かの地では、それを問題と見なす人がいなかった。だからこそ、その時代に自分らしい生き方を貫き、我が子を育て上げた著者の母親の強さに深い感銘を受けます」(神田氏)
『元刑事が見た発達障害 真剣に共存を考える』
榎本澄雄著
花風社/2,160円(税込み)
語られない“闇”に眼を向けよう
発達障害を抱える人は、なぜ犯罪の加害者や被害者になりやすいのか。元刑事が発達障害者の知られざる現実を明らかにする。
「この本では『発達障害者はなぜ性被害に遭いやすいのか』という問題にも深く切り込んでいる。これは、今まで光が当てられなかった領域です。こうした問題があっても、当事者やその親は沈黙して表に出ないケースが多い。しかし本当に教養ある人間とは、現実に起こっている問題について認識し、それを解決するために何ができるかを考え、関わっていける人ではないでしょうか。マクロ経済を語ったり、未来経済を予測することだけが教養ではないという思いを込めて推薦したい1冊です」(神田氏)
『世界は四大文明でできている』
橋爪大三郎著
NHK出版新書/886円(税込み)
宗教こそが人の思考のOSである
「キリスト教文明」「イスラム文明」「ヒンドゥー文明」「中国・儒教文明」の四大文明を取り上げ、各宗教が人々の思考や行動に与える影響を解説する。
「宗教とは、人間の思考パターンを動かすOSのようなもの。宗教というプラットフォームを理解しないと、グローバルでビジネスをするのは難しい。本書が提供する重要な視点は、『文明と文化の違い』。文化は同質なものの寄せ集めにすぎないが、文明は多文化・他民族を束ねる普遍性を持つ。その基礎には宗教の「正典(カノン)」という行動規範がある。多くの日本企業が育てているのはあくまで“企業文化”であり、異なる民族・文化の人たちを巻き込むには文明作りが重要だと教えられます」(神田氏)
更新:11月22日 00:05