2018年10月10日 公開
2023年03月14日 更新
中国古典や哲学などを読む重要性はわかったけれども、ちょっととっつきにくい……と感じる人もいるかもしれない。そんな人に対し、北尾氏は「いきなり原典を読む必要はない」と アドバイスする。
「特に哲学は難解だし、古典を読むのはなかなか難しいことだと思います。でも、もし自分を磨くために読んでみようと思うのなら、ぜひ手に取ってもらいたいものです。大事なのは思想ですから、それが吸収できれば、どんな形で読んでも良いのです。自分が面白く感じるように書いてある本を探しましょう」
たとえば、『論語』を読むなら、安岡正篤氏の『論語に学ぶ』のような論語をやさしく解説した本を読むと、すんなり論語に親しめるという。
「最近は、中国古典や哲学の入門書やマンガ仕立てにしたものがたくさんありますので、そういった本から読んでみるのも良いと思います。歴史に関することなら、『三国志』のようなマンガもたくさんあります。とにかくなんらかの形で触れてみることが重要です」
古典と異なり、専門書は当たり外れが大きい。読む値打ちがある本をどのように見極めているのだろうか。
「専門書を読むときには、まず、『はじめに』と『おわりに』を読みます。それで読む価値がなさそうなら、中身は読みません。また、中身が読めないネット書店で買おうかどうか悩んだときは、著者の経歴を見て決めます。どんなキャリアを歩んできて、過去にどんな本を書いたのか。それを見れば、だいたいの判断が下せます。他の読者のレビューはあまり気にしません」
読書量を増やすには、毎日の読書を習慣づけることも必要だろう。分刻みのスケジュールをこなす北尾氏は、どんなに忙しくても、毎日1時間から1時間半は、必ず読書をするという。
「私の場合は、就寝前と起床後の時間を、読書の時間にあてています。寝る前に本を読みながら、その日の反省をするのです。朝も、だいたい朝4時に起きるので、6時ぐらいまで寝床で本を読んでいます。だから、ベッドのまわりには大量に本が積まれています」
このように習慣づけることで、多忙な中でも週7~8冊の読書量を確保しているという。
「読書の習慣はどなたにもお勧めできますが、特にお子さんがいて、我が子を本好きに育てたいと思うなら、まずはご自身がそれを身につけるべきです。親が本を読んでいなければ、子供に『読みなさい』と言っても読もうとしません。反対に、親が読書をしている姿を見せれば、子も読むようになるでしょう」
北尾氏の愛読書の一つに『修身教授録』(致知出版社)がある。「国民教育の師父」とうたわれた、元神戸大学教授の森信三氏が、天王寺師範学校の「修身科」で講義した内容を、生徒が筆記した講義録だ。「『現代に甦る人間学の要諦』というサブタイトルにふさわしい名著。誰でも平易に読めるよう書かれていますが、その内容は深みがあり、何度読んでも新しい発見や学びがあります」。北尾氏の本には、付箋が大量に貼られ、様々な色のラインが至るところに引かれていた。
<『THE21』2018年10月号より>
更新:11月25日 00:05