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ヤフー出身・ジャパンネット銀行社長の「現場が自走する」組織改革

2018年07月30日 公開
2023年03月14日 更新

田鎖智人(ジャパンネット銀行社長)

 

仕事の内容によって、適したやり方が違う

 現場の社員が仕事の目的を共有し、自分たちでチームを作って、自走する。そして、チャレンジを数多く繰り返す。UIUXなどについては非常に効果的な仕事の仕方だが、一方で、これが馴染まない領域もあると、田鎖氏は話す。

「2012年にヤフー社長に就任した宮坂(学)さん(現・ヤフー会長)は、『爆速経営』を掲げました。ヤフーが創業した当初はインターネットというものの信頼性の確立が重要だったのですが、この頃にはその段階は達成されていたので、モードを変えたのです。

 しかし、私が担当していたお金を扱う業務は、単に爆速でやればいいというものではありません。スピードを重視したために、必要な手順を省き、品質を下げてリリースすることになると、事故が起きかねません。お金のことでお客様にご迷惑をかけると、大問題です。

 実際、私は一部でサービスの品質低下が徐々に進むのを感じました。そこで、それを元に戻すわけですが、一度崩れた仕事の手順を再構築するには、かなりの時間がかかりました。

 ジャパンネット銀行でも、実際にお客様のお金を扱う部分は、従来通り、きっちりと手順を追って業務を進める仕事の仕方を崩すつもりはありません。

 ただ、長年の慣習でやっているだけで、なぜ必要なのかわからなくなっている業務も少なくありません。そうしたことは、どんどん見直していきます。それによってコストが下がれば、お客様にとってのメリットにもなります」

 最後に、ジャパンネット銀行が目指している姿について聞いた。

「銀行は、お客様にとって目的ではありません。何かの目的を達成するための手段です。ですから、手段として最適なものにしていきたい。摩擦を感じることなく使っていただけるようにしたいと思っています。

 すでに、ヤフーのサービスの決済を簡単にできるようにしたり、アプリを使ってスマホだけで振込みができるようにするなど、様々な決済サービスの仕組みを提供していますが、これからも、お客様が実現したいことをサポートする取り組みを続けていきます」

著者紹介

田鎖智人(たくさり・ともひと)

〔株〕ジャパンネット銀行代表取締役社長

1972年生まれ。東京都出身。95年、早稲田大学政治経済学部を卒業後、〔株〕日本信販(現・三菱UFJニコス〔株〕)に入社。2003年、ヤフー〔株〕に入社。06年、〔株〕ジャパンネット銀行との資本業務提携に伴い、同社の社外取締役に就任。その後、ヤフーにて、決済企画部長、ID決済本部長、決済金融本部長を歴任し、17年にジャパンネット銀行代表取締役に就任。18年2月、同社代表取締役社長に就任。

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