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ヤフー出身・ジャパンネット銀行社長の「現場が自走する」組織改革

2018年07月30日 公開
2023年03月14日 更新

田鎖智人(ジャパンネット銀行社長)

 

「ななめ会議」で気づかされたこと

 チームで生産性を上げることを重視している田鎖氏だが、かつては、部下に仕事を任せず、自分でやってしまう上司だったという。

「自分の強みを診断する『ストレングスファインダー』というツールによると、私は『コントローラー』なんです。何でも自分の手でやりたがるタイプです。

 ヤフーには『ななめ会議』というものがあります。これは、部下が直属の上司に『耳が痛いこと』を言うのは難しいので、隣の部の部長に言う、という会議です。私の部下たちが、隣の部の部長に、私にとって『耳が痛いこと』を伝えて、私は隣の部の部長からフィードバックを受けるのです。

 そこで、『キーボードを打ちながら部下の報告を受けていて、話を聞いているのかどうかわからない』『田鎖さんが何の仕事をしているのかわからない』『仕事のゴールがわからず、目先の仕事だけ指示される』というような指摘をされました。確かに、中には役員から直接指示された秘匿性の高い仕事もあったとはいえ、部下に仕事を任せないから、自分で抱える仕事が多くなり、余裕がなくなっていたんです。

 ななめ会議で指摘されたことで、私はチームメンバーと情報共有ができておらず、そのため、部下は何をしたらいいのかわからない状態だということに気がつきました。それで、仕事の仕方を変えました」

 部下に仕事を任せられない大きな要因として、「自分でやったほうが早い」ということがあるだろう。チームで仕事をすると、調整に手間がかかり、個人で仕事をするよりも生産性が下がってしまう。それを恐れる人も少なくない。

「それは、どの時間軸で考えるかの問題でしょう。

 確かに、その瞬間だけを見れば、1人がやったほうが、生産性が高いこともあります。けれども、その1人がいないときでも他の人が代わりを務めたり、他の人が仕事を分担して、その1人が別の仕事にエネルギーを使ったりできるようにしたほうが、全体としての生産性がより高まるわけです。

 仕事を任せることは、その人に成長の機会を与えることにもなります。私が自分で仕事を抱え込んでいたということは、部下の成長機会を奪い、独り占めしていたということですから、大いに反省しました。

 成長機会を与えられないままだと、昇進しても、スキル不足で求められる仕事ができないでしょう。そうならないためにも、仕事を部下に任せて、チームで仕事をすることが重要なのです」

 部下に仕事を任せたときには、上司がサポートすることが不可欠だ。そこでも、注意しているポイントがあるという。

「まず、きちんと報告をしてもらうことが大切です。そして、報告を受けたら、次にするべきことを指示するのではなく、『どうしたらいいと思う?』というように、質問することを心がけています。そうすると、部下が自分で考えるので、経験値が早く高まるのです。

 また、自分で考えることで、やりがいも生まれ、仕事が楽しくなるはずです。大変そうな仕事が発生したときに、『嫌だな……』とモチベーションが下がるのか、『やりましょう!』とモチベーションが上がるのかは、その仕事をやる意義が腑に落ちているかどうかでしょう。

 チームで目的が共有できていれば、仕事が楽しくなり、生産性も高まる。仕事のやり方を変えたことで、そう気がつきました」

 

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仕事の内容によって、適したやり方が違う >

著者紹介

田鎖智人(たくさり・ともひと)

〔株〕ジャパンネット銀行代表取締役社長

1972年生まれ。東京都出身。95年、早稲田大学政治経済学部を卒業後、〔株〕日本信販(現・三菱UFJニコス〔株〕)に入社。2003年、ヤフー〔株〕に入社。06年、〔株〕ジャパンネット銀行との資本業務提携に伴い、同社の社外取締役に就任。その後、ヤフーにて、決済企画部長、ID決済本部長、決済金融本部長を歴任し、17年にジャパンネット銀行代表取締役に就任。18年2月、同社代表取締役社長に就任。

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