2017年01月25日 公開
2022年05月25日 更新
金融とITを融合させた新たなサービスが続々と登場し、盛り上がりを見せている。金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた「FinTech」という造語も、一般のニュースでもよく使われるようになった。既存の金融機関もFinTechサービスを開発しているし、FinTechサービスで起業するベンチャーも数々現われている。その中でも、「日本を代表するFinTech企業」と呼ばれているのがマネーフォワードだ。なぜ、同社は注目を集める存在になったのか? そして、何を目指しているのか? 創業社長の辻庸介氏にお話をうかがった。
――御社は、個人向けと法人向け、両方のサービスを展開されています。
辻 個人向けの自動家計簿・資産管理サービス『マネーフォワード』と、中小企業や個人事業主のバックオフィス機能を自動化するクラウドサービス『MFクラウドシリーズ』の、主に2つのサービスを展開しています。『マネーフォワード』の現在の利用者数は約400万で、日本最大のスマホ向け家計簿サービスです。『MFクラウドシリーズ』は約50万ユーザーに使っていただいています。
――『マネーフォワード』のユーザーには、どういう人が多いのでしょうか?
辻 平均年齢は30代後半くらい。男女比では男性がやや多いですね。主にビジネスパーソンの方々に使っていただいています。銀行口座や証券口座を複数持っていて、自分が全部でいくら持っているのか、資産を把握できていない方も多いと思いますが、『マネーフォワード』に登録していただくと、銀行口座や証券口座を一元管理できます。さらに、入出金明細や取引履歴を自動で取得し、自動的に「毎月いくら貯まっているのか」「何にお金を使っているのか」といった家計簿をつけてくれます。
――『MFクラウドシリーズ』についてはどうでしょうか?
辻 こちらは、『マネーフォワード』同様、銀行やクレジットカード会社とクラウドでつながって、従来は手入力だった売上や経費といった数字が自動で入ってくるようにするサービスです。機械学習機能を搭載していて、仕訳も自動で行ないます。個人事業主の方には、確定申告の手間が従来の10分の1くらいに減らせるということで喜んでいただいています。中小企業についても、経理などにかかる時間を大幅に短縮できるということで、1人の会社から100~200人規模の会社にまで幅広く使っていただいています。
――同様のサービスは他社も提供していますが、御社のサービスの優位性はどこにあるのでしょうか?
辻 『マネーフォワード』については、まず、連携している金融関連サービスの数がNo.1(※2016年12月末時点、マネーフォワード調べ)であるということ。それから、「予算に対して実際はどうだったか」「うまく家計や資産を管理している他のユーザーはどうしているか」を示すことで、「管理」だけでなく「改善」にまで踏み込んでいることが大きいのではないかと思います。あとは、ユーザビリティですね。
『MFクラウドシリーズ』も連携している金融関連サービスの数がNo.1ですし、使いやすさも優れていると思います。それから、たとえば個人事業主向けの『MFクラウド確定申告』だと月額800円(税抜/ベーシックプラン)というように、料金の安さもあるでしょう。
ユーザーの声をすぐにサービスに反映させる、開発スピードの速さも強みです。当社は行動指針の1つとして「ユーザーフォーカス」を掲げていて、カスタマーサポートや営業担当者がユーザーから聞いたことを直接エンジニアに伝え、常に改善を繰り返す体制を整えています。サービスをすべて内製しているからこそ、できていることです。
――ちなみに、行動指針として他に掲げられていることは?
辻 全部で3つあって、「ユーザーフォーカス」の他は、「テクノロジードリブン」と「フェアネス」です。「フェアネス」とは、ユーザーや株主、社員、社会といったステークホルダーに対して貢献できるよう、誠実に向きあう、ということです。
――強みの1つである、連携している金融関連サービスの数がNo.1であるということは、なぜ実現できているのでしょうか?
辻 1つはテクノロジーだと思います。それから、みずほ銀行や住信SBIネット銀行、また各地域の大手地銀など、合計11の銀行と業務・資本提携をさせていただいていることで、信用があることも大きい。その他の株主にも、日本を代表する数々の会社に名を連ねていただいています。
――御社と同時期に創業した、同様のサービスを提供している会社が他にもある中で、多くの銀行が御社と提携を結んだのはなぜなのでしょうか?
辻 まず、「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる」というビジョンや、「お金の課題をテクノロジーで解決する」という当社の姿勢に共鳴していただいたこと。また、私も含めて、当社の創業メンバーはベンチャーにしては年齢が高く、金融とITに詳しい人ばかりだったからだと思います。私はソニーとマネックス証券の出身ですし、他のメンバーも、ソニー出身のエンジニアや、野村證券出身のアナリスト、自分でアルゴリズムトレードの会社を作って経営していた人などがそろっていました。だから安心感を持っていただけたのだと思います。最初から良いメンバーが集まっていましたね。
――数多くの金融機関と連携するためには、テクノロジーも高度なものが必要なのでしょうか?
辻 そうですね。日々の運用もしなくてはなりませんから。一番大事なのは、ユーザーがストレスを感じることなく利用できることです。スマホは画面が小さいので、これがなかなか難しい。まだまだうまくできていなくて、四苦八苦しながら改善をしています。
――技術への投資もかなりしているのですか?
辻 今はビジネス職も増えてきましたが、当初は社員の8割くらいがエンジニアでした。行動指針に「テクノロジードリブン」を掲げているように、エンジニアが活躍している会社であることは間違いありません。
エンジニアは、社外の方も招きながら、定期的に勉強会を開いて技術力を高めています。また、当社ではRubyというプログラミング言語を使っているのですが、言語自体の開発をしている「Rubyコミッター」という人に、社員としてオフィスで仕事をしてもらっています。
――ビジネス職というのは、法人営業の担当者?
辻 マーケティング、カスタマーサポート、経営企画などさまざまですが、中小企業に加え、会計事務所様にも『MFクラウドシリーズ』を使っていただいているので、多いのは会計事務所様への営業の担当者です。営業拠点として、支店を全国5カ所(札幌・仙台・名古屋・大阪・福岡)に置いています。
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ユーザーの声をもとに、ひたすら改善を繰り返す >
更新:11月22日 00:05