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100人の村にビル・ゲイツが 越してきたら、村の平均年収はいくら?

2018年08月06日 公開
2023年03月14日 更新

神永正博(東北学院大学工学部教授)

データのバラつきで集団の特徴がわかる

 では、平均や正規分布はどんなときに使うのでしょうか。それは、各データのバラつき具合を知りたいときです(図2)。

平均値を真ん中とし、各データがそこからどれだけ離れているかを示すことで、集団全体の特徴を表わす指標になり得るのです。

 たとえば、学業における偏差値がわかりやすいでしょう。私の大学では、入学後すぐに生徒全員に数学のテストを受けてもらいます。すると、年度によって数値が一カ所に固まっているときもあれば、激しく散らばっているときもあります。このデータのバラつきの大きさが、標準偏差と呼ばれるものです。標準偏差が小さいと平均値付近の山は高くなり、大きいと山は低くなります。つまり、前者は突出して優秀な生徒はいないものの粒ぞろいの生徒が集まっている。後者は、できない人も多いが、そのぶん突出して優秀な生徒も多いという事実がわかるのです。このように、データからさまざまな特徴を読み解くことができます。

 これだけわかれば、データを見て適切な判断を下せる確率は上がるはず。少なくとも、真偽不明のデータに騙されることは減るでしょうし、信頼できるデータも見つけやすくなるでしょう。ぜひ、ビジネスシーンで統計の知識を役立ててください。

 

『THE21』2018年7月号より

取材構成 THE21編集部

著者紹介

神永正博(かみなが・まさひろ)

東北学院大学工学部教授

1967年、東京都生まれ。京都大学大学院理学研究科数学専攻博士課程中退。博士(理学/大阪大学)。日立製作所中央研究所研究員などを経て現職。専門は暗号理論、数理物理。2010年度、数理科学研究所客員研究員として南インドに滞在。『未来思考』(朝日新聞出版)『ウソを見破る統計学』(講談社ブルーバックス)『不透明な時代を見抜く「統計思考力」』(日経ビジネス人文庫)など、著書多数。

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