2018年06月29日 公開
どんな職場にも「やっかいな人」がいます。
やたらと頑固で自分の仕事のやり方を変えようとしなかったり、かと思うとちょっと注意しただけでへこんでしまったり、コロコロ気分が変わったり……。
本書にて描かれる「素顔の」西郷さんですが、まさに「職場のやっかいさん」そのものです。
「頑固」なイメージは前からあったのですが、とくに感情面でこれほどまでにブレがある人だとは意外でした。特に戊辰戦争で弟が戦死した後、こんなにふさぎ込んでいたとは知りませんでした。
この西郷の行動や感情のブレを著者は、「懐に入ってきた人と同化してしまう」と見事に分析して見せますが、周りの人たちにとっては「なんで?」という感じだったでしょう。
でも、人間はそもそもブレるものだと思うのです。
機嫌のいい日も悪い日もあれば、あるときは「これが正しい」と思っていても、やっぱり「こっちだ」と考えが変わることもしょっちゅう。
従来の歴史関連本などでは、偉人たちはつねに一つの目標に向かってブレずに突き進んでいたように描かれますが、本当にそうだったのでしょうか。
あの「大西郷」ですらこうだったと考えれば、おそらく偉人達も皆、悩み、ブレてきたであろうことが想像できます。
ただ、多くの人はそんな自分を隠した。その代表的な人物が大久保利通でしょう。ブレない怜悧なイメージを作り上げることが、権威を維持するために不可欠だったと考えていたはずです。
大久保は西郷と比較されてよく批判されますが、多くの人はむしろ「大久保的」に活きているのではないでしょうか。たとえば「経営者たるもの」「部長たるもの」というイメージに自分を当てはめ、感情や行動を制限する。迷っていてもそれを表面には出さないようにする。それが、従来型のリーダーに求められる資質だったと思います。
西郷型と大久保型、どちらがいいのかはわかりません。
ただ、昨今は「強みも弱みもさらけだすリーダー」のほうがチームをまとめやすい、という話をよく聞きます。ある意味、その典型とも言えるのがこの西郷のリーダーシップなのかもしれません。
まぁ、実際にこんなリーダーがいたら大変だと思いますが……。
(執筆:Y村)
更新:11月22日 00:05