2018年05月22日 公開
2023年03月16日 更新
「知的でわかりやすい説明には型がある」と主張する、元予備校人気講師の犬塚壮志氏。中でも冒頭のつかみで大事なのが、相手の欲を刺激することと、反対に「リスク」を提示することだという。それは一体どういうことなのか。著書『頭のいい説明は型で決まる』をもとに解説してくれた。
前回、予備校の授業で使っているキラーフレーズとして、
「これができないと他の受験生に差をつけられちゃうよ」
というフレーズを多用する、というお話をさせてもらいました。
このフレーズは、ストレートに言いますと、「他の受験生に負けてしまう可能性がある」という受験生の〝恐怖〟を刺激することを目的としています。
このテクニックは恐怖訴求と呼ばれるもので、よくテレビCMや電車の中吊り広告などで見かけるかもしれませんね。
たとえば、「これをやらないと、脳卒中になるリスクが○%増える!」―─このような煽り文句で視聴率を上げるTV番組や、部数を伸ばしている雑誌もあります。その内容が事実かどうかは別として、やはり人は自分のリスクが高まるとなったら耳を傾けるものなのです。
これも「なーんだ、そんなことか」とか、逆に「あざといヤツだな」と思う方もいるかもしれませんね。それでも、実際問題として、やはり人というのは「メリット」「デメリット」で動くものです。
特に、大学入試のような短期間で成果を出さなければならない状況ではそれが顕著に出ます。成果を出せなかったら、つまり合格できなかったらフリーターになってしまうという恐怖が、常に受験生についてまわります。
ダニエル・カーネマンが提唱する「プロスペクト理論」によれば、人はできるだけ損失を回避したいという心理状態をもつ傾向にあるそうです。
もちろん、ウソや過剰な表現は絶対に避けるべきです。
ただ、確実に相手がリスクにさらされるのであれば、説明する側は臆せずにしっかりとそのリスクを相手に伝えるべきです。自分の利益のためではなく、相手のために「実際にその説明を聴いていなかったら、損をしてしまうよ」ということをしっかりと伝えるべきなのです。
生徒としては、その説明をしっかり聴かなかったら、学習の理解が追いつかず、学業成績が低下するのは事実なのですから。
たとえ相手に疎うとまれようが、実際に相手に起こりうるリスクは、説明の冒頭で相手にしっかりと伝えるようにすべきなのです。
更新:11月25日 00:05