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東京ヤクルト・小川淳司監督が語る采配「全員平等では選手は育たない」

2012年02月01日 公開
2022年12月27日 更新

小川淳司

小川淳司

「最近の若い人は...」は指導者の仕事の放棄だ

努力したからといって報われるわけではないのは、どの世界でも同じ。だが、熾烈な勝負の世界では、その残酷さがことさら厳しく感じられる。

「努力については、正しい努力、正しい練習をしなければいけない、という考え方もあると思います。でも私は、最終的には、練習自体に間違いはそんなにないと思います。間違いだとしても、それに気づいたプロセスは自分の引き出しとなって活きるからです。

もちろん、正しい努力をするに越したことはないですが、合理的な努力のしかたに気づくためにも、間違いも経験しなければいけない。野球にはこれという正解がないだけに、なおさらです。

畠山にしても、一軍で活躍するようになるまでに何年もかかっています。でも本人は『バッティングについていろいろな試行錯誤をしたことは、遠回りではあったけれど、間違いではなかった』といっていますよ。

もちろん、練習のしかたが間違っていると思ったら、それは指摘します。でも、そのときは、本当に言葉を尽くさないと選手は納得しませんね。それくらい頑固なヤツじゃないとレギュラーにはなれないハイレベルな世界でもあります。皆のいうことを全部聞いていたら、“自分”をつくれませんから。

自分という芯があって、アドバイスを受け入れるかどうかを選択できる。それが選ばれたプロに必要な姿勢です」

高校を卒業したばかりの選手とも接するが、世代が違うからといって接し方に難しさは感じないという。

「『最近の若い人は……』といってしまうのはありがちなことですが、それでは管理職や指導者としての仕事を放棄していることになるのではないでしょうか。

私もそういう愚痴をこぼしてしまうことはありますよ(笑)。でも、いってしまってから必ず『こんなことをいってちゃダメだよな』と反省しますね。考えてみれば、自分たちだって若いころにはさんざん同じことをいわれているんですよ。『昔はこうじゃなかった』と説教されてきたはずなんです。

つまり、常識はつねに変わっていくということ。野球の技術理論にしても、科学的なアプローチが発達して、データの量も分析の道具も、昔といまとでは雲泥の差がある。はっきりいって、いまのほうがはるかに優っていると思いますよ。

それなのに、昔の人が上からものをいう。確かに昔のほうがよかった点があるにしても、押しつけては、若い世代はいうことを聞きません。

私はスカウトや二軍の指導者として、下は18歳くらいの子たちとも長年接してきました。ですから、たいていのことでは動じません。『時代によって、いろんな人が出てくるんだな』と考えられますね」

 

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