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東京ヤクルト・小川淳司監督が語る采配「野球には正解がない」

2012年02月01日 公開
2023年05月16日 更新

小川淳司

横浜スタジアム

不振にあえぐチームを短期間で再建し、球団史上最速で100勝を達成した名将。そんな小川淳司監督にチームを勝たせる秘訣を聞けば、ビジネスにも活かせるのではないだろうか。そう考えて取材に臨むと、小川監督の口からまず出たのは「監督の采配で勝つ試合はない」という言葉だった。(取材:川端隆人)

※本稿は『THE21』2012年2月号より一部抜粋・編集したものです。

 

小川淳司

(おがわじゅんじ)

1957年、千葉県生まれ。75年、夏の甲子園の優勝投手(習志野高校)。中央大学では強打者として活躍。社会人野球(河合楽器硬式野球部)を経て、81年にヤクルトスワローズに入団。92年、日本ハムファイターズに移籍、同年引退。93年、ヤクルトに復帰し、スカウト、コーチ、2軍監督などを歴任。2010年、1軍ヘッドコーチから監督代行に就任。11年、正式に監督就任。

 

監督の采配で勝つ試合はない

「プロ野球チームにとっていちばん大事なことは、お客さんが入ってくれることです。そのためには勝つことが欠かせません。では、勝つためにはどうすればいいのか。私はそこから出発して、選手への接し方、選手の起用法などを考えています。

人によって野球観は違うので、他の方がどう考えているのかわかりませんが、私は監督で勝つ試合はないと思っています。プレーするのはあくまでも選手ですから、監督のミスで負けた試合はあっても、監督の采配で勝ったという試合は、まずないのではないでしょうか。

大切なのは、全員が優勝という同じ方向を向き、選手が自分の力を発揮できる環境をつくることです。

野球には正解がありません。しかし、だからこそ、誰を起用するのかについても、自分のなかでしっかりと判断基準をもっています。けれども、それで失敗することもあります。

自分の采配がまずかったと思ったら、『自分のミスで負けた』と新聞記者にコメントしますし、選手に直接『申し訳なかった』といったこともあります。負けが込んでくればチームにほころびが生じてきます。それは避けて通れません。ほころびが広がらないようにするには、やはり結果を出さなければならないのです」

選手が同じ方向を向いてまとまるためには、野球観を共有することが重要だと、小川監督は話す。

「プロ野球というのは成績が直接年俸に反映する世界ですから、選手のやる気については、基本的に心配しなくていい。やる気があって当然ですから。ただ、監督がとんでもないことを繰り返せば、それはまずいことになります。

たとえば、ノーアウト1、2塁の場面で、その日、3打数3安打のバッターに打順が回ってきたとしましょう。そこでバッターを交代させる監督もいるわけです。『4打席目も打つことはあり得ないだろう』という判断で、それも1つの考えではあります。

ただ、『なぜそこで交代させるのか?』と思う選手もいるでしょうし、そう思うことが多くなったら、『もうこの人のもとでは頑張れない』ということにもなるでしょう。これが野球観の違いです。

野球観が人それぞれ違うのは当然で、選手と考え方が食い違うのは仕方がありません。でも、私はできるだけ『皆だいたいこう思うだろうな』という線を考えて、そのうえで、作戦や選手の起用を決めるようにしています。なかなかそううまくはいかないのですが(笑)」

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