2018年05月30日 公開
2023年08月24日 更新
仕事が忙しく、家の片づけを後回しにしていたら、定年を迎える頃には積もりに積もったものに囲まれて手がつけられない……というケースが増えているという。人生100年時代と言われる昨今、定年後の暮らしを快適にするためには、その前から身の回りを片づけていくこと。そんな「生前整理」の秘訣を、数々の家の問題を見てきた古堅純子氏にうかがった。
20年前から家事代行サービスの仕事を始め、これまでに2,000軒以上を訪問してきました。以前はごく一部の富裕層からの依頼が中心でしたが、最近は一般家庭から「家を片づけてほしい」という依頼が増えています。片づけられない人が増えている――これが長年この仕事に携わってきた私の実感です。
たとえば、ファッションが趣味の、定年退職したばかりのご主人がいるお宅では、スーツや普段着、小物が1部屋を占領し、衣装ケースが廊下まであふれていました。退職後、スーツはそれほど必要ないはずですが、手放すつもりはない様子。ものを残したまま次々と新しいものを買い足していく現代人特有の消費行動が、家の中にものがあふれる状況を生み出しているのです。
片づけられない人の特徴は、一つは、ものに執着する、あるいは“もったいない精神”が強いためにものを捨てられないことです。このタイプの人は、思い出の写真や読み終えた新聞・雑誌など、過去のものを後生大事に取っておくクセがあり、とくに中高年世代に顕著です。
もう一つは、深く考えずに買ってしまうこと。先ほどとは反対で、ものに対する思い入れが少ないために、なんとなく買って、なんとなく取っておく。これは若者によく見られる傾向です。
ものが増えすぎると、家の中が狭くなって居心地が悪くなるうえ、ものを動かして掃除するのが大変でホコリも溜まる一方。心身ともに悪影響です。さらに、片づけを後回しにする人は、ものに煩わされるだけでなく、人生における決断を後回しにするため、さまざまな問題を悪化させることにもなりかねません。
そもそも片づけとは、要るか要らないかを判断し、要らないものを処分していく行為で、決断の連続です。片づけられない人は、ものばかりか、家計や健康、親の介護問題といった目の前の問題も放置しようとします。ものとの向き合い方は、その人の生き方そのものでもあるのです。
更新:11月22日 00:05