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ストレスに強くなる「朝と夜の過ごし方」とは?

2018年05月07日 公開
2023年03月16日 更新

有田秀穂(東邦大学医学部名誉教授)

早起きしてウォーキング、そして夜は一杯引っかける

セロトニンを活性化させるには、「朝の過ごし方」がポイント。セロトニンは太陽光を浴びると分泌されるので、朝、カーテンを開けてなるべく太陽光を浴びるようにしましょう。

さらにお勧めなのは、朝のウォーキング。太陽光を浴びることができるのはもちろん、ウォーキングのようなリズミカルな運動は、セロトニンを分泌する細胞を活性化させるのです。

こうして1日をスタートしても、夕方には元気がなくなってきます。そこで出番となるのがオキシトシンです。オキシトシンは「グルーミング」行為により分泌されます。グルーミングとは動物の「毛づくろい」を指し、人間で言えば、おしゃべりや心地良いスキンシップがそれに当たります。

ですので、仕事後に仲間と「赤提灯」で一杯引っかけることは、ストレスを溜めないためには大正解。それも難しい議論ではなく、仕事のグチなど気楽な話題のほうがいい。肩と肩とが触れ合うほどの距離感で、心地良いおしゃべりをする。これこそオキシトシンを分泌させる最高のシチュエーションです。飲むのは別にお酒である必要はありません。

家でもなるべく家族との触れ合いを増やしましょう。ペットを飼うのもお勧めです。

また、マッサージやリフレクソロジーは、まさにグルーミング。最近、こうした店が増えているのは、ストレス社会の表われなのかもしれません。

 

SNSの交流だけでは「オキシトシン」は分泌されない

このように、オキシトシンは人との交流や接触で分泌されます。ただ、注意していただきたいのは、「デジタル上のみでのやりとりでは、オキシトシンは分泌されない」こと。

つまりメールやLINEによるやりとりをいくら頻繁に行なったところで、オキシトシンは分泌されないのです。電話であれば、グルーミング効果は得られます。

デジタル機器に依存しすぎる生活はストレスの元凶です。指先一つ動かせばあらゆる情報が入ってくるため、脳だけが長時間にわたって酷使されます。こうしたデジタルな疲労は、睡眠を妨げる原因に。

SNSでの交流を楽しむ人も多いですが、オキシトシンの分泌に繋がらないうえ、別の問題もあります。たとえば、アップした記事や写真に「いいね!」などの反応をもらうことで、脳内には「ドーパミン」が放出されます。これは快感を得られるホルモンであり、ストレス中枢をなだめる効果があります。

ただ一方で、「いいね!」がつかないと、それによって落ち込み、むしろストレスを増やしてしまう人が多いのです。

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著者紹介

有田秀穂(ありた・ひでほ)

医学博士

1948年、東京生まれ。セロトニンDojo代表。東京大学医学部卒業、医師免許取得。東海大学病院、米国ニューヨーク州立大学留学などを経て、東邦大学医学部統合生理学にて、坐禅とセロトニン神経・前頭前野について研究。同大学にて教授を務めたのち、名誉教授に。『脳からストレスを消す技術』 (サンマーク出版)ほか著書多数。

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