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社内政治も思いのままに! 職場で役立つ交渉術6

2018年04月19日 公開
2023年03月23日 更新

荘司雅彦(弁護士)

 

「対上司」で役立つ心理テクニック

上司を巻き込み、企画書を通す「殺し文句」はこれだ!

 少々無理のある企画書だが、上司のOKをもらいたい……こうした場面では、企画書を「作ってから見せる」のはNG。いきなり完成した企画書を見せられたとき、相手はまず「アラ」を探そうとするもの。まして「少々無理のある」ものであれば、即座に却下される可能性大です。これを防ぐには、企画作成の途中段階で、上司に指導を仰ぐこと。あえて細部は詰めずに上司に見せて、「この企画、このあたりはどのようにすればよいか、教えていただけますか」と頼めばいいのです。

「教えてください」は、目上の人間に対する殺し文句。人は皆「教えたがり」な生き物ですから、「あなたの知恵が必要だ」と言われると、大きな喜びを感じるのです。これで上司の「自己重要感」が満たされます。

 そして、完成品には、上司の指導内容を反映させましょう。自分が手を入れたものに対して、にべもなく「NO」を言うのは難しいもの。上司は指導をした段階で、「当事者」になっているのです。こうしてさりげなく巻き込んでしまえば、上司は知らぬ間に「応援せざるを得ない」立場になるのです。

 

会議で意見を通すための「称賛+付加」のテクニック

多くの場合、会議には「オピニオンリーダー」がいて、あとはそのフォロワー、という構図ができているもの。会議で自分の意見を通したいときには、オピニオンリーダーを攻略すれば、皆が自然に追随します。そのポイントは、「称賛」と「付加」。発言のたびに「そのとおりですね、素晴らしいです」と持ち上げ、「ではこれを『加えて』はどうでしょう?」と、自分の意見を重ねていきます。相手と考えが違うことも当然ありますが、そこはうまく誘導を。弁護士は法廷で、「~ですよね?」と問いを重ねてYESと言わせ続けた末に「最初の話と逆ですね」と矛盾を突く戦法をよくとります。

 会議の場では、そこまで高度でなくても、小さな「YES」を引き出すだけで目的は達せます。この、小さな要求から始めてYESを積み重ね、最終的に自分の望ましい方向に導く手法は、人は一貫した振る舞いをしようとするという「一貫性の原理」という心理に働きかけた「フット・イン・ザ・ドア」という交渉術。「こういうことですね」「そうだよ」と繰り返すと、相手は少々違和感を覚えても、NOと言えなくなるのです。

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著者紹介

荘司雅彦(しょうじ・まさひこ)

弁護士

1958年、三重県生まれ。81年、東京大学法学部卒業後、旧・日本長期信用銀行、野村證券投資信託を経て、91年に弁護士登録。刑事・民事を問わず多数の案件をこなす他、執筆業でも活躍。『男と女の法律戦略』(講談社現代新書)はドラマ『離婚弁護士』の原案に。『説得の戦略 交渉心理学入門』(ディスカヴァー携書)など、心理術・交渉術に関する著書多数。

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