2018年04月19日 公開
2023年03月23日 更新
それらの「信用度」について、独自の視点から総合的に測ろうとして作成したのが、この後(次ページ)に紹介する「信用度テスト」です。「信用とは何か」を知るうえで、金融的な側面以外の尺度についてこれだけ詳細な分析をしたものは、これまでになかったと言い切ってよいでしょう。
このうち、得点の半分を占めるのは、私が中学生向けに書いたキャリア教育の本『ビミョーな未来をどう生きるか』にまとめた「高クレジット人間の十箇条」です。これは、信用度の土台を作る、いわば基本のキにあたるものです。 中でも「挨拶ができる」「約束を守る」「人の話が聴ける」の3項目は、昔からの学校教育の原点であり、家庭でも、保護者がわが子に教える家庭教育の大原則とも重なります。つまり学校教育においても「信用される人間」を育てることに重点が置かれているわけです。
また、(4)~(8)の5項目は、前回この連載で説明した「情報編集力」に該当します。 最後の「感謝と畏れの感覚がある」とは、何かを達成したとき、自分を支えてくれる周りの環境に対しても感謝できたり、他者とのつながりの中に自分が生かされているという謙虚な気持ちが持てたりすることを示しています。 これらの基本的な十項目が確立されていてこそ、キャリアを通して信用度を積み上げていくことができるのです。
このテストには、他にも様々な「信用度」を表わす尺度が並んでいます。目に見えない価値を数字に表わし、可視化しようとする試みです。 自分の信用度を採点してみる傍ら、リストアップされた尺度について考えてみてください。先の「10箇条」は全体の得点の5割を占めますが、金融的な信用度の配点は全体の1割でしかなく、その他の応用編が4割となっています。
私は、財産があることは、金融的な信用にはつながるけれども、人としての普遍的な信用にはそこまで深く関係していないのではないか、と考えています。先ほどお話しした信用度の授業の中でも、高校生たちから「資産の多さより、どうやって稼いだのか、また、稼いだお金をどう使うのかが問題だ」という意見が出されました。 フランスには「ノブレス・オブリージュ(身分の高い者がそれに応じて果たすべき社会的な責任と義務)」という言葉があります。欧米の経営者や資産家が社会貢献に資金を投じるのは、そのことが、金融的な信用を超えた、自分の人生の「信用度」を上げることを知っているからでしょう。
ちなみに私自身は合計93点になりました。このテストで何点以上だからどう、ということはないのですが、自分の強みや弱みを見つけ、より高い信用度をゲットする機会にしてもらえたらと思います。人が何によって人を信用するかを考えることは、ひるがえって自分がどんな価値観を持ち、何を善としてとらえているかを知ることにもつながります。このテストを通して、自分の生き方の方向性を探ってみてください。
もう一つ、覚えておいてほしいのは、「信用度」と「報酬(お金)」の関係です。
リクルートの「スタディサプリラボ」で一緒に授業をしているお笑い芸人の西野亮廣さんは、自身の絵本『えんとつ町のプペル』の資金をクラウドファンディングで募集し、国内歴代最高となる1億円の資金を個人で調達した実績の持ち主です。彼は、資金を集められるかどうかの決め手は、テレビに出ているとかいった知名度や人気ではなく、信用だと語っています。実際、有名タレントのクラウドファンディングの実績はあまり良くないのだそうです。
彼は、『えんとつ町のプペル』を自費で1万部買い取って予約販売サイトを立ち上げ、注文が入る度に直筆のサイン本を自分で梱包して発送し、発売日までに1万冊以上を売り切りました。彼の行動に「共感」し、「信頼」した人たちが1万人以上集まったわけです。
報酬とは、もちろん仕事の対価として得られるものですが、自分が積み上げてきた信頼と共感の関数=信用度に対して支払われるものでもあります。いくら能力や自信や知名度があろうと、他者からの信用が得られないような仕事の仕方をしていたら、西野さんのような素晴らしい実績を挙げることはできないでしょう。報酬は決して信用度に先立つものではなく、信用度があってこそ手にすることができるものです。
キャリアを積み、信用度を上げていくことは、自分の人生をどのようなものにしていくかを考える基盤になります。それこそが、人生設計すなわちライフデザインの本質なのだと思います。
更新:11月22日 00:05