2018年04月14日 公開
2023年01月11日 更新
フラットな組織文化では、誰もが自ら仕事を創造する働き方が当然なのかと思いがちだが、そういうわけではないという。意欲のある人が挑戦できる環境であると同時に、挑戦しない自由が認められていることも大事だと星野氏は話す。
「スタッフには任された仕事を全うする責任はありますが、それ以上のことを強制されるのはよくないと思っています。人によって持てる力も違えば、やる気も経験も興味の対象も違います。全員が自主的に仕事を創造できるかというと、それが得意ではない人もいます。皆に同じように創造性を発揮するよう求めることは、フラットな組織文化とは相容れません。
もちろん、優秀なスタッフには総支配人を目指して欲しいと思いますし、そのように働きかけたりもしますが、最後は本人の意思次第です。むしろ、会社の期待に応えなかったことが評価に結びつき、本人が『やりたくない』と言えなくなることのほうが問題です。個人の事情を無視して無理強いしても、長続きしません。結果、会社のためにも本人のためにもならないでしょう」
最後に、いま政府が推し進める「働き方改革」についても聞いた。星野氏は、「サービス産業の生産性を高めるには、働き方改革よりも『休み方改革』が先決」と主張する。
「何年も前から提言し続けているのですが、サービス業の生産性を上げるうえでのボトルネックは、大型連休の一極集中だと私は思います。旅行需要がゴールデンウィークやシルバーウィークなどに集中するために、観光産業をはじめとするサービス産業全体が収益を上げられる時期が限られてしまい、生産性の低さにつながっています。
もし、大型連休を地域別に分散させ、需要を平準化できれば、今よりも長期間に渡って収益を上げることができ、生産性が格段に向上します。また、旅行者にとっても、交通渋滞や観光地の混雑が緩和され、旅行費用も下がり、快適な旅行が可能になり一石二鳥です。企業努力による生産性向上も大事ですが、休日の分散取得など国レベルでの取り組みをぜひ期待したいところです」
『トップも知らない星野リゾート』
前田はるみ著、『THE21』編集部編
PHP研究所/1,620円
代表である星野佳路氏も知らないところでスタッフが“勝手に”ヒットコンテンツを創り上げる……!?競争力の源である「フラットな組織」の秘密を、人気アクティビティが生まれた背景にある物語と共に解き明かす。『THE21』の好評連載「星野リゾートの現場力」(2016年1月号~17年7月号)に大幅加筆修正。
《『THE21』2018年5月号より》
更新:11月25日 00:05