2018年02月22日 公開
また、日本ではいわゆる「パッケージ型のAIサービス」というものが話題となっていますが、あれもシリコンバレーにいるとほとんど耳にしません。そもそも多くのIT企業は自分たちでそうしたシステムを作る能力がある、ということもありますが、社員数5人くらいのスタートアップでも、そういうパッケージ型のものは使いません。そこに数千万円の費用を投入するならば、同じ額で超優秀なデータサイエンティスト一人を雇い、ゼロから独自のアーキテクチャーを作り上げるという戦略を取ります。そのような独自のシステムを持つことが、競争優位性につながるからです。
デザインする過程でオープンソースのものは使いこなしますが、あくまで設計は優秀なエンジニアやデータサイエンティストが行なうことが多いです。
もう一つ、データ活用に関して言えることは、データがあるからといって金のなる木にすぐにはならないということです。
もちろん、データを持たない会社は今後さらなる競争を強いられるため、データを今すぐ取得する体制を取らなければなりませんが、アマゾンの元チーフサイエンティストであるアンドレアス・ワイガンド氏いわく、データは「21世紀の石油と同じ」。その意味は、「データを持つ会社が世界を動かす」ということもあると思いますが、石油もデータも「生のままでは使い物にならない」ということも挙げられます。だからこそ、石油を精製するように、データも処理して使いやすい形にまとめられる会社がどんどん競争力を持つのです。そんな中、独自の局地的な生のデータを持っているだけでは、すぐには競争力につながらないことも多いのです。
シリコンバレーの企業では、「公開できるデータは公開してなんぼ」という考えの企業が少なくありません。もちろん業界によりますが、自社で開発したアルゴリズムより、もっと良いものを作ってくれる人をバーチャルコンペで集わせるくらいです。
そこには、データはあくまでデータであり、大事なのはそこから質の高いモデルを作り、それを商品や製品に組み込み、金のなる木に変えることだと理解しているからでしょう。
それと比較すると、日本企業は自社のデータを公開するのを躊躇するケースが多いようです。いわく『企業秘密が筒抜けになる』『競争力が奪われる』『そこに宝の山となるデータが眠っているかもしれないので、まずは自分たちで見える化してからだ』……。これは、クラウドにデータを上げることを躊躇うのと同じ心理でしょう。つまり、自分たちが持っているデータに対する期待値が非常に高いのです。
しかし、実際には自社がどんなデータを持っているのかさえ把握できていないケースも少なくないのです 。『まずは自分たちの持っているデータにどんな可能性があるか自分たちで調べてから……』と遠回りなことをするよりも、そのデータをデータ解析の専門家であるデータサイエンティストに見てもらい、活用価値を見定め、何らかのプロジェクトをスタートさせたほうがいいでしょう。
以上、いくつかの課題点を指摘しましたが、今後、日本企業にとってAI技術を活用しないという選択肢はもはや残されていません。
その際には『どこから導入するか』ではなく、『今導入できる領域はどこか』という議論から始めることが、AI技術導入成功のカギを握ると思います。
更新:11月22日 00:05