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人間関係に依存した営業はもう通用しない!

2018年04月06日 公開
2023年03月23日 更新

藤本篤志(グランド・デザインズ代表取締役)

藤本篤志

営業というと、人間関係が大事だという意識があるだろう。しかし、ベストセラー『御社の営業がダメな理由』著者で営業コンサルタントの藤本篤志氏は、「そうした人間関係だけに依存した営業はもう通用しない」と話す。どういうことなのだろうか。また、今の時代に必要な営業スキルとはどのようなものなのか。詳しくうかがった。(取材・構成=西澤まどか)

※本稿は『THE21』2018年3月号より一部抜粋・編集したものです。

 

「昭和の営業」が通じなくなった理由

ビジネス環境の変化にともない、営業に求められるスキルも変わりつつあります。その変化についてひと言で言うならば、「人間関係に依存した営業の時代は終わった」ということです。

足繁く通ったり接待をしたりして顧客と親しくなることだけで契約を取ったり、「長いつきあいだから」と自動的に受注したり、といった昔ながらの営業は難しくなっているのです。

背景にあるのは、企業のコンプライアンス意識が高まったことです。今までは「社長が気に入っているから」「恩のある会社だから」という理由で、取引先を選んでいたかもしれません。しかし、今ではコンプライアンス意識から、「同業他社との比較」「コンペ開催の有無」などが確認される時代です。

もう一つの背景として挙げられるのは、IT化です。

昔は、商品の情報は営業マンの持ってくるパンフレットだけが頼りでした。しかし、今は検索すればさまざまな情報がすぐに手に入り、ライバル社との比較や口コミなども確かめることができます。仲のいい営業マンが言っているから、とすべて信用してもらえる時代ではありません。

よって、今は正統派の営業スキルで勝負する時代と言うことが言えるのです。

 

商品をアピールするより「ネック」を探せ

では、正統派の営業スキルとは、どのようなものか。細かく言えば多岐に渡りますが、まずは何よりも、相手の「ニーズ」と「ネック」をつかむこと。

ニーズとは、お客さんはどのようなものを欲しがっているのかということ。ネックとは、たとえば、価格が高い、機能面に不安がある、などの「買わない理由」のことです。

ニーズを喚起し、ネックを解決する――これが営業の仕事です。とくに、「ネック」を解消し、他社より自社を選ぶだけの理由があると思わせることが重要なのですが、商品の売り込みばかりを考えて、相手が何に躊躇して決定しないのかに気づかない営業マンは多いのです。

ネックはニーズに比べると見つけにくいものです。ヒアリングをしても、顧客はネックを隠すことがあるからです。単純に指摘しづらい場合もあれば、顧客自身にもネックが何なのかはっきりわかっていないという場合もあります。

解決策は、ヒアリングを重ねること。多くの場合、ふとした言葉の中にネックを示すシグナルが現われます。そのシグナルを読み取る力も、営業が磨くべきスキルです。ここで大事なのは、顧客との関係性です。

「人間関係に依存しない営業」と言っても、人間関係を軽視して良いわけではないのです。顧客と直接会うことで担当者の人柄、趣味など周辺環境を把握するとともに、その人の発想や価値観を知っておくことは必要です。

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「そのままメモ」でシグナルを見落とさない >

著者紹介

藤本篤志(ふじもと・あつし)

グランド・デザインズ代表取締役

1961年大阪生まれ。大阪市立大学法学部卒。株式会社USEN取締役、株式会社スタッフサービス・ホールディングス取締役を歴任。2005年7月より現職。営業現役時代に営業プレーヤーとしても、営業マネジャーとしてもトップの成績を収めた経験を活かして、営業コンサルティング事業を始める。2013年4月、長年のコンサルティングで培ったノウハウを活かした画期的な営業プロセスマネジメント・クラウドシステム「営業ミエルマップ」を完成させ、販売を開始する。『御社の営業がダメな理由』『社畜のススメ』(新潮新書)をはじめ多数のビジネス書を執筆する。

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