2017年12月13日 公開
2023年03月23日 更新
2014年、鳴り物入りで始まった「NISA(少額投資非課税制度)」をベースにして、来年より新しく始まる「つみたてNISA」。長期的な投資を目的とした本制度はどのように成立したのか、その背景と初心者にお勧めのポイントを、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』の著者である、公認会計士・山田真哉氏にうかがった。
皆さんは「お金」をどのような形で持っていますか? 日本における個人資産の5割以上は、「現金・預金」で保有されているのが現状で、その総額は938兆円にも上ります。
しかし、超低金利時代の今、銀行にお金を預けていても、ほとんど利息がつかないのはご存じのとおり。実は、この眠ったお金が日本の景気を停滞させている要因の一つでもあるのです。そこで、日本経済を活性化すべく、金融庁は「貯蓄から投資へ」をスローガンに、預金から市場へのお金の流れを促す施策を講じてきました。その嚆矢(こうし)とされたのが、2014年に始まった「NISA(ニーサ/少額投資非課税制度)」だったのです。
NISAは、年間最大120万円までの投資で得た値上がり益や配当・分配金を5年間にわたって非課税にする税の優遇制度。本来、投資から得た利益の約20%が税金として徴収されるところを非課税とすることで、投資へのハードルや負担をぐっと下げたのです。
ちなみに、日本人は貯蓄好きとして知られますが、もともとはコツコツと貯蓄をする国民性とは言えませんでした。
たとえば、江戸時代の庶民には「宵越しの金は持たない」という風潮があり、幕府からは倹約令がたびたび出されていました。そして戦後は、国民の貯蓄意識を高めるべく道徳の授業で貯蓄を教えたり、「こども郵便局」という子供がお金を預ける機関まで作られました。
さらに、1963年には「マル優」と呼ばれる「少額貯蓄非課税制度」が始まります。これは「350万円までの貯蓄は、その利息に税金はかけない」という貯蓄の非課税制度。この制度が功を奏して国民のお金が銀行に集まり、それが企業への融資となり、経済成長の一助となったのです。つまり、戦後の高度経済成長は、日本人を「貯蓄好き」に改造したことで実現したとも言えるのです。
しかし現在、企業へのお金の流れは、銀行融資という間接金融から株式市場を経由した直接金融へと移行しています。そして、バブル崩壊後、外資によるM&Aが増え、国の基幹企業までもが外資の傘下になる恐れも出てきました。こうした時代の変化に合わせて、金融庁は「貯蓄から投資へ」と方向転換し、個人株主を増やすべく対策を講じたのです。
つまり、NISAは貯蓄好きの国民を「投資好き」に生まれ変わらせるために作られたもの。投資でありながら安定的に資産運用ができるように設計されていて、「投資に興味はあるが、踏み出せない」という投資初心者が始めるにはよくできた制度です。では、その理由を次から説明していきましょう。
更新:11月23日 00:05