2018年01月30日 公開
2023年02月02日 更新
ヘッドハンターとして国際的に活躍してきた橘・フクシマ・咲江氏。これからの40代は、働き方が大きく変化する時代に対応することが求められると話す。では、40代ではどんなスキルを身につけておくべきなのか。詳しくうかがった。《取材・構成=林加愛、写真撮影=長谷川博一》
世界最大のエグゼクティブサーチ会社であるコーン・フェリー・インターナショナル社において長年アジア圏トップの業績を上げてきた橘・フクシマ・咲江氏。米「ビジネスウィーク」誌で「世界で最も影響力のあるヘッドハンター百人」に唯一の日本人として選ばれた人材のプロである。フクシマ氏は、ビジネスマンがこれからのキャリアを考えるうえでは、まず大前提となる「働き方」そのものの変化への対応が必須になると指摘する。
「向こう10年で、『働き方』自体が大きく変化するでしょう。AI、IoT、シェアリングエコノミーなどの発展は、雇用のありようを大きく変えるはずです。そこに順応できるかどうかが、重要な岐路となります」
現在、大多数のビジネスマンは組織に属する「所有」ベースの働き方をしているが、今後は各人の専門性を様々な拠点で「共有」する雇用形態が発達する、とフクシマ氏。
「たとえば、専門性の高い仕事を複数の企業と契約して請け負う個人事業主『インディペンデント・コントラクター』。あるいは組織に属しながら専門性を高めて『企業内プロ』となる道もありますし、そうした人が兼業で複数の組織と仕事をする、という選択肢も。多様な働き方の中から、自分に合う形態を選ぶ時代が来ようとしています」
出産や育児等、ライフイベントの影響を受けやすい女性にとって、この変化は好機でもある。
「プロとしての能力があれば、組織内外でも、時間的・空間的拘束が少ない就業形態が選べます。企業内プロとして上を目指すもよし、兼業するもよし。いずれにせよ自分の市場価値を高める努力が不可欠です」
そうした変革の時期にあって、40代のうちに身につけておくべきスキルや能力とはどういったものか。フクシマ氏は、ある領域の専門性に加えて、「全体を読む力」と「数字を読む力」との二つを挙げる。「全体を読む力」については、40代の今こそ身につけるチャンスだと語る。
「社会人となって20年、すでに複数の部署の経験者がほとんどでしょう。しかし、それらの各部署のことは熟知していても、会社全体がどういう組織体系になっているのかを社長の代わりに外部に説明できるでしょうか。ビジョンは、事業戦略は、競合との差は、業界での立ち位置は。それらを踏まえ、自社のバリューチェーンを社長の視点から投資家に説明できるぐらい把握することが大切です」
商品開発から販売に至るまでの自社のバリューチェーンを知り、市場での自社の立ち位置をしることで、自分の仕事の位置付が認識できる。すると、日々こなすタスクの意味も理解できる。
「社長だったらとの意識を持って仕事をするか、ただ漫然とタスクをこなすかでは、数年で、歴然たる差が出ます。自分の仕事がどこに繋がっているかわかっている人は、その受け手にとっていかに便利な形でそれを提供するかを考えられるからです」
それは相手の立場を考える力であり、そのニーズをつかんで先取りするシミュレーションの能力でもある。フクシマ氏自身がキャリアの中で日々実践してきたことでもあるという。
「クライアントに必要な情報を求められる前に提供する。米国本社の取締役の時には、社外取締役への自社の説明では、その人の共感可能な事例で説明する。部下には、『当事者ならどうするか』を考えるようにアドバイスをするなど、様々な場面でこれを実践してきました。こうしたスキルは、どのようは就労形態で働くかにかかわらず必ず役立つものです」
加えて、「数字を読む力」は不可欠だとのこと。
「数字、即ち事業規模や部門ごとの業績(P&L、財務諸表)、そのバランスなどを読む力は、主導的立場に立つ人に不可欠です。管理職を経験していないと数字が苦手という人もいるかもしれませんが、社長になったつもりで、意識して会社の数字を見るようにすれば、大きく可能性が広がるでしょう」
更新:11月25日 00:05