2017年11月15日 公開
2023年01月30日 更新
だが多くの人は、次のアクションを提案するために資料を作ったつもりなのに、上司から「これでは決められない」「判断材料が不十分だ」などと却下された経験があるはずだ。そこで三木氏は、「2段上の視点」に立った資料作りを推奨する。
「上司から『あの資料、作っておいて』と言われたら要注意です。日本語で『資料』と呼ばれるものには、実は『データ』『インフォメーション(情報)』『ナレッジ(知識)』『ウィズダム(知恵)』が混在して、それぞれ質やレベルが異なっています。
つまり、『あの資料』では、どのレベルの資料を想定しているのか、作り手と受け取り手で齟齬が発生する可能性があるのです。
では、どのようなレベルかというと、この4つはそれぞれ、組織の階層に対応しています。これが『DIKW理論』と呼ばれるフレームワークです。
つまり、相手が管理職か事業部長なのか、それとも社長や役員なのかによって、求められる“資料”のレベルは変わるということ。自分が管理職で、事業部長から資料作成を命じられたのだとしたら、その資料は、取締役会で了承をもらうためのものと考えられます。その場合、自分のポジションの2段上の『ウィズダム』の視点を入れなければ、読み手の期待に応えられません。
少なくとも、上司に『資料を作れ』と言われたら、どのレベルを求めているのか最初に確認すべきです。加えて、作成の過程でも上司とこまめに方向性を擦り合わせれば、相手が期待したとおりの資料を作れます」
たとえば、売上げ報告書を作るなら、DIKW理論を使って、次のようにレベルアップしていく。
「『データ』とは、それ自体は意味のない数字や記号のこと。『新宿店の月次の売上げ』といった生の数字を報告書に書いても、相手が管理職以上なら、『だから一体、何が言いたいんだ?』と突き返されるだけです。
データを『インフォメーション』に加工するには、『その数字や情報がどんな意味を持つか?』を示さなくてはいけません。たとえば、『過去1年の新宿店の売上げ推移』をグラフ化した結果、『10月は他の月より売上げが50%増加した』とわかったとします。さらに、ここ数年も同じ傾向があったとしら、これを報告書に書けば、上司は来年の10月も売上げが増えると予測できるので、『この月は店舗スタッフを増員しよう』といった戦術を立てることができます。
その上の『ナレッジ』は、『事業をどう展開すべきか?』という戦略です。よって、インフォメーションをさらに掘り下げて分析し、『来年度の店舗売上げを前年比150%にするには、広告宣伝費を3割増やすべきだ』といった提案を、分析した根拠とともに盛り込みます。
最上位の『ウィズダム』は、『なぜこの会社がその事業をするべきか?』という理念やビジョンを示すもの。マーケット全体を分析し、『現在の社会人向け事業に加え、子供向け事業にも参入すべきだ』といった提案にまで踏み込めば、取締役会でも通用する報告書になります」
次のページ
孫社長が「回帰分析」の習得を命じた理由とは? >
更新:11月25日 00:05