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校閲のプロが教える、「マジ書けない!」人のための文章の書き方

2017年11月21日 公開
2023年03月23日 更新

前田安正(朝日新聞メディアプロダクション校閲事業部長)

「仮説」を立てたら「Why」で掘り下げる

企画や提案のために文章を書くなら、「自分はなぜこれがやりたいのか?」を掘り下げる作業が欠かせません。
企画を立てようと思った時、自分の中にアイデアの元になるネタがいくつかあるはずです。それは、自分の直感だったり、取材や観察によって得た情報だったりします。

そこから色々な連想を広げていくと、アイデア同士が結びつき、どこかで「自分が語りたいストーリーは、きっとこれだ」という一本の線が見えてきます。つまり「仮説」が立つわけです。
この仮説が自分でも納得のいくものなら、それが文章の「骨格」になります。

そこで今度は、この仮説を「Why」で掘り下げましょう。
「自分は『文章の書き方』に関する書籍を作るべきだ」という仮説なら、「なぜ『文章』がテーマなのか?」「なぜ単行本ではなく新書なのか?」「なぜビジネスマン向けなのか?」などと、自分に何度も「なぜ?」を問いかけてください。
するとある段階で、「どうしたら実現できるか」という「How」が出てきたり、さらに細かく「誰とやるか(Who)」「いつやるか(When)」「どこでやるか(WhenWhere)」を検討することになります。

 

途中で行き詰まったら別の仮説を立ててみる

それらを考え抜くと、最終的に「だから自分はこれをやりたい」という「What」が明確になります。つまり、最初に立てた仮説に戻るわけです。こうして上から下へと掘り下げていき、最後にまた一番上の仮説に戻ることができれば、それは文章の「骨格」として正しいと言えます(図参照)。

企画書を作る時も、最初に「骨格」を書き、あとは「5W1H」で掘り下げた内容をそのまま肉づけすれば、わかりやすい文章が完成します。
もちろん、「なぜ?」で掘り下げた結果、途中で行き詰まることもあるでしょう。
「あれ、なぜビジネスマン向けでなくてはいけないんだ?」
そうなったら、最初の仮説が企画として成り立たない証拠。その場合は、またネタに戻って発想を広げ、別の仮説を立ててから、「なぜ?」で掘り下げる。この作業を繰り返していけば、企画そのものがしっかりしたものになると同時に、文章にまとめるのもラクになります。

 

「なぜ」を突き詰めれば魅力的なフレーズが生まれる

「Why」で掘り下げる作業をすると、読む人を惹き付けるキーワードやキャッチフレーズも浮かびやすくなります。

 拙著を例にとって恐縮ですが、今年出版した『マジ文章書けないんだけど』は、タイトルが秀逸だとお褒めの言葉をいただきます。一緒に本を作ったスタッフとブレストする中で出てきたフレーズを書名にしたのですが、それは私たちが「なぜこの本を作るのだろう?」という問いを突き詰めた結果です。

最初に「文章を書けない人のための本」という骨格があり、「なぜ文章が苦手な人の本が必要なのか」を話していたときに、ふとスタッフから「『マジ文章書けない』みたいな若い人に読んでほしい」というひと言が飛び出しました。これは私たちが散々「Why」を繰り返したからこそ、出てきたフレーズであることは間違いありません。

こうした言葉遣いは、語彙の豊富さやセンスが必要だと思われがちです。しかし誰にとってもわかりやすく、心に届くフレーズを書くのに、難しい言葉はいりません。

大事なのは、文章の骨格を決めることと、「なぜ?」を使って掘り下げること。これさえできれば、誰にでも「わかりやすく、メッセージが伝わる文章」が書けるはずです。

 

《『THE21』2017年11月号より》

著者紹介

前田安正(まえだ・やすまさ)

〔株〕朝日新聞メディアプロダクション校閲事業部長/未来交創ビジョンクリエイター

早稲田大学卒業後、朝日新聞社に入社。名古屋本社編集センター長補佐、大阪本社校閲マネジャー、用語幹事、東京本社校閲センター長、編集担当補佐兼経営企画担当補佐などを歴任。国語問題、漢字幹事についての特集や連載、コラムを担当。朝日カルチャーセンターのエッセイ教室や早稲田大学生協主催の就職支援講座にも出講。「文章の直し方」など、企業の広報研修も多数手がける。著書に、『マジ文章書けないんだけど』(大和書房)などがある。

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