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地方企業への転職で カギとなる能力は?

2017年09月18日 公開
2022年07月04日 更新

中村天江(リクルートワークス研究所 労働政策センター長)

転職先で必須となる「アンラーニング」とは?

 かといって、スペシャリストでなければ地方で働けないわけではありません。入社後にさまざまな部署や職種を経験しながら管理職になったジェネラリストも、地方での潜在ニーズは非常に高いものがあります。

 地方の企業が抱える課題の一つとして移住者が挙げるものに、生産性があります。仕事の効率化やタイムマネジメントについては、都市のほうが活発に行なわれていると言えるかもしれません。この意味でも、都市部の中間管理職世代も、マネジメント経験を活かして地方で活躍できる可能性は十分あります。

 ただし、いくら優れたやり方を提案しても、もともとその地域にいる人からすれば「よそ者に言われたくない」という感情を抱くもの。かといって何もせずにいたら、職場に貢献できません。問われるのは「周囲との軋轢を乗り越える力」です。興味深いことに、転職後に業績貢献をしたと答えた人ほど、職場での軋轢も経験しています。

 軋轢を乗り越えて活躍する条件の一つは、「アンラーニング(学習棄却)」の実践です。

 これは「それまで身につけた経験・やり方をあえて捨てる」という意味。たとえ都市の大企業で成功した業務効率化の施策でも、地方の中小企業の風土や仕組みには合わないこともあります。それを上から目線で押しつければ、軋轢が生じやすくなって当然です。やみくもに以前のやり方を押しつけるのではなく、本当にそこで役立つノウハウや情報を見極め、時には自分から過去の知見を捨てる判断も必要ということ。私たちの調査でも、アンラーニングを実践した人は、しなかった人と比べて、転職先の業績に貢献したと回答した割合が約20ポイント高いという結果が出ています。

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移住者活躍のため『自分への期待」を明確に >

著者紹介

中村天江(なかむら・あきえ)

㈱リクルート ホールディングス リクルートワークス研究所 労働政策センター長

東京大学大学院数理科学研究科修士課程修了。1999年、㈱リクルート入社。就職・転職・キャリア形成支援のサービス立ち上げや企画を経て、2009年にリクルートワークス研究所へ異動。「人材採用システムの研究」で、16年に一橋大学で博士号(商学)取得。専門は人的資源管理論。

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