2017年09月02日 公開
2023年03月23日 更新
「そんなことが可能なのか?」と思われるかもしれませんが、実際にはどんな分野でもストーリーにアレンジできるものです。
たとえば、私の専門分野である法律の世界。一見、無味乾燥な条文の丸暗記ばかりが必要と思われがちですが、それは誤解です。さまざまな「判例」は、まさにひとつの物語です。とくに私が留学時代に熱心に学んだ「家族法」(夫婦や親子など家族に関連する法律)は、当事者の行動に共感したり憤慨したりの連続でした。
1つひとつの判例もドラマチックですが、複数の判例を時系列で追うと、そこにもストーリーがあります。
たとえば、1920年代には却下されていた「不貞をした側による離婚の申し立て」が、70年代には緩和され、80年代になると「別居期間が長く、結婚が破綻していれば許される」と変わっていくのは、日本における家族観の変化が垣間見えて面白いものです。1つの判例、判例から判例への推移、さらにそれらが家族をめぐる全体の歴史を作っていく。このように、重層的にストーリーが楽しめるのです。
経営や会計といった、数字に関わる分野の暗記も同様です。利益目標を立て、それに向かって何をすればどういう結果が得られるか、というストーリーを組み立てることが可能です。ストーリー化とは、因果関係を整理することで記憶に残りやすくする作業とも言えるでしょう。
ストーリー化が難しそうな経済学の公式にも、物語性を見出すことは可能です。「人がこう行動すればこんな現象が起こる」といった分析や推論はまさにストーリー。たとえば、各人が公平性を無視して自分の利益だけを追求すると結局は全員が損をする、という「共有地の悲劇」などはその典型です。
日本史や世界史となると、長大なストーリーそのものです。ここで「年表の丸暗記」などの無機的な勉強法を選択してしまうのはもったいない話です。年代を覚えるための「語呂合わせ」も、良い方法だとは思えません。起こった出来事の内容と直結する語句を使っているならまだしも、大半はかなり無理のあるこじつけや、無関係な言葉です。出来事と語句の関係性が薄いため、思い出しにくいのです。出来事の前後関係や背景を踏まえて一連の流れとして覚えるほうが効率的で、ひとつのエピソードから連想して思い出しやすくもなるはずです。
では、語学はどうでしょうか。英単語や文法の暗記はストーリーとは縁が薄いように思われますが、「面白いストーリーを伴う文章」を読むことで楽しく覚えられます。小説や興味のあるテーマのニュース、海外スターのゴシップ記事なども面白い教材になります。英語「を」覚えようとするのではなく、英語「で」覚える感覚で楽しむのが良い方法です。
更新:11月24日 00:05