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「精神論」は通用しない!中国人は「仕組み」で動く

2017年08月23日 公開
2023年03月23日 更新

<連載>中国人エリートの「グレーゾーン」での戦い方第6回:江口征男(GML上海/Y&E総経理)

日本と中国では「公平感」の捉え方が違う

このような「自然とそうなる仕組み」を作る上で重要なことが3つあります。

1つ目が「公平感」を担保することです。しかも、日本人が考える公平感ではなく、その仕組みで自然と動いてほしいターゲット層が考える公平感を担保することがポイントです。

中国全土に展開するドラックストアチェーンの「ワトソンズ」では、店舗で働くメンバーに月毎にボーナスを配っています。月店舗売上が予算や昨対比の80%を超えたら1人50元、90%を超えたら1人100元のように、月単位の店舗成績に基づいてボーナスがもらえる仕組みです。

この仕組みの中でポイントは、月ボーナスの金額が「一般スタッフも店長も同額」ということです。普通に考えると、役職が異なる店長と一般スタッフは月ボーナスの金額に差をつけてもいいような気がします。しかし、店長のボーナス金額を一般スタッフよりも高く設定すると、「なぜ我々スタッフが頑張って結果を出しているのに、結果に貢献していない(ように見える)店長を儲けさせなければならないのか」という不平不満が出て、一番頑張って欲しい一般スタッフのモチベーションが上がらないからです。

月ボーナスの金額を役職にかかわらず同額にすることで、「よし、みんなで一緒に頑張りましょう」となるわけです(当然それだけだと店長に不満が出るので、店長には年間ボーナスでうまく処遇をします)。

 

半年に1回のボーナスでは間延びする!

2つ目は「短期間で回す」ということです。ワトソンズの例もそうですが、店員へのボーナスは年単位、半年単位だとだらけるので、「月単位」でやるのがいいということです。

中国では、買い物の決済は現金やカードではなく支付宝や微信payなどの電子マネーの利用が増えていますが、その利用率向上に一役買っているのが、電子マネーで決済した直後にスマホ上に出てくる「くじ引き」です。

1日1回、支付宝や微信payで代金を支払うと、このくじ引きで1元未満のランダムに決まる金額を割引ポイントとしてもらえます。この割引ポイントは、同じ週内に同じ支払方法(支付宝や微信pay)で払った場合に自動的に適用されるので、別の店舗、商品を割引価格で消費できることになります。この場合は「週サイクル」で回していることになります。

このように仕組みごとに適正な(短期の)期間を設定して、自然と回していくことが重要なのです。

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著者紹介

江口征男(えぐち・まさお)

GML上海総経理

Tuck (Dartmouth) MBA。横浜国立大学大学院工学研究科修了。外資系経営コンサルティング会社、子供服アパレル会社を経て2007年より中国上海移住。現在上海にて経営コンサルティング会社2社(GML上海、Y&E)を経営。著書に『中国13億人を相手に商売する方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。中国ビジネスに関する講演、執筆多数。

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