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「信用B/S残高」とは?

2017年03月06日 公開
2023年05月17日 更新

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「信用B/S残高」とは?

企業を経営する上で、財務B/S(貸借対照表)をしっかり管理し、借方・貸方をバランスするのは常識です。しかし、個人が人生で成功するために重要な「信用B/S」に関心を持っている人は少ないと思います。

信用B/Sとは、いわば「他人との貸し借り」です。他人を助けることで「貸し」の残高が増え、他人の助けを借りることで「借り」の残高が増えることになります。

異論はあるかもしれませんが、究極的には「人間関係は貸し借りだ」と私は思います。財務B/Sと同じように、信用B/Sも貸借バランスが合っていないと長続きしません。takeだけしている人は最終的には誰からも助けてもらえないのと同じように、take なしでgiveだけ続けていくことは難しいからです。

 

中国人の「身内びいき」にも理由がある

さて、こうした「信用B/S」のバランスを取るのが上手なのが、中国人です。相手を助けることでいずれ自分にメリットがあると思えれば積極的に協力しますが、そうではないと判断すれば決して協力しない。ある意味シビアに人間関係を見ています。

例外に思えるのは、「身内」に対してです。中国人は「他人」と「身内」とでは態度を大きく変え、身内に対しては自分が損をしてでも助けると言われています。身内が困っていれば自分の全財産を投げ打ってでも助けることを厭わないということで、一見、信用B/Sの考え方を無視しているように思えます。

ただ、他人と身内に対するこの中国人の考え方の違いも、結局は貸し借りなのです。ただ、貸し借りの帳尻を合わせる期間が違うだけ。他人とは短期的に貸借バランスをプラスにしたいのに対して、身内に対しては生涯をかけてバランスできればいいということなのです。身内が困っているときに全財産をはたいてでも助けるということは、逆に自分が困っているときには相手も同じことをしてくれることを期待するということです。

このように人や状況により、貸し借りをバランスしたいと思う期間は異なるかもしれませんが、信用B/S残高は必ずバランスされる方向に引力が働くのです。

ビジネスを成功させるための必要条件の1つは「他力をうまく使うこと」だと私は考えていますが、そのためにも信用B/Sを上手に管理することはとても重要です。

 

あえて「借りを増やす」ことで他人との距離を縮める

他力をうまくつかうために信用B/S管理が重要ということになると、多くの人はgive→takeの順番で相手との信用関係を築こうとすると思います。しかしそれでは、他人にgiveできることが少ない人は、なかなか他力を使えないということになってしまいます。またgive、giveで貸し残高を積み立てるのを待ってから人の助けを借りようと思うと時間もかかります。

そこで有効なのは、「あえて先に相手からtakeしてしまう」という方法です。先に借りを作ることで、「近い将来借りを返さないと」とこちらが思うのと同時に、相手も将来借りを返してほしいという気持ちになる。つまり、相手との関係が継続していくのです。

例えば、日本人は食事をする際に割り勘にすることが多いのに対して、中国人は基本的に、食事代は誰か1人が払います。こうすれば「では、次回が私が出しましょう」ということで、再び食事の機会が生まれることになる(一部若者の間でAA制という割り勘が増えてきてはいますが)。こうして中国人はお互いの関係を深め、より大きな貸借をできるようにしようと考えるのです。

日本人はなるべく人に貸しや借りを作らず、その場でチャラにすることを良しとする人が多いですが、これは関係を深めていくチャンスを失っているという見方もできるのです。

ビジネスを拡大させるには資金を調達して財務BS残高を大きくする必要があるのと同じように、個人も成長するためには、近い距離にある他人を増やして、信用B/S残高を大きくしなければならないのです。

 

相手には「聞いてもらえるお願い」だけをする

以前、成功している中国人経営者の方からこんな話を聞きました。「私が若いころは、たくさん同世代の経営者がいたが、どんどん姿が消えていき、今でも第一線で活躍している経営者は一握りしかいない。生き残っている経営者に共通しているのは“聞いてもらえるお願いしか相手にしない”ということだ」と。

このようにビジネスで成功する人は、必ず信用B/Sに着目し、積極的に管理しているのです。

著者紹介

江口征男(えぐち・まさお)

GML上海総経理

Tuck (Dartmouth) MBA。横浜国立大学大学院工学研究科修了。外資系経営コンサルティング会社、子供服アパレル会社を経て2007年より中国上海移住。現在上海にて経営コンサルティング会社2社(GML上海、Y&E)を経営。著書に『中国13億人を相手に商売する方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。中国ビジネスに関する講演、執筆多数。

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