2017年10月14日 公開
2023年03月23日 更新
次のような実験があります。Aチームにはむき出しでクッキーが入っている箱を、Bチームには同じ数の個別包装されたクッキーをひと箱与えました。するとAチームのほうが約4倍も速くクッキーを完食したのです。つまり必要な「アクション数」(実験では個包装の包みを開ける手間)が少ないほど、行動は速くなるということです。
これを応用し、やりたいこと、習慣化したいことに関してはアクション数を減らし、やめたいことはアクション数を多くするように工夫すれば、「やりたいこと」に着手することができるでしょう。たとえば、私は朝にジョギングをするために、ジョギングウェアのままで眠ります。朝起きてウェアに着替える手間がないので、出かける気になります。他にも、すぐに取りかからねばならない仕事に関しては書類を手前に置くなど、プロセスを減らす工夫をするだけで、うまくやる気につなげられます。
「どこに置けば取り出しやすいか」を考えることは、未来の自分を思いやることにつながります。「取り出しやすさ」=アクション数を考えて整理整頓してみましょう。
続けたいことは手順を減らそう
成長に頭打ちを感じ、意欲が減退しているのなら、評価の仕方を変えてみてはどうでしょうか。
こんな実験があります。ある中学生にテストを解いてもらいました。Aチームには事前に「他の学生と比較して評価する」と、Bチームには、「あなたの成績の上がり具合を基準にして評価する」と伝えました。結果、Bチームの成績が大きく伸び、しかも「テストが楽しかった」という声も多く出ました。つまり他人との比較より「自分の成長度合いによって評価」されたほうが人は努力しやすいのです。
「チームで好成績を取る」「お客様に喜んでいただく」「上司に評価されるため」など「客観的理由(人からどう思われたいか)」を目標にしても、それらは必ずしも自分でコントロールできません。だから「評価を落とさない」レベルで満足してしまいがちです。一方で「もっと良いものを作りたい」など「主観的理由(自分がどうしたいか)」を仕事の目的にすると、モチベーションを比較的一定に保つことができます。
他人との競争が悪いわけではありません。ただし長期的視点で見ると、他人と比較することはストレスになり得ます。成長したいという意欲を伸ばすには、過去の自分と比べて伸びを実感させることです。
「前と比べてどうか?」を評価基準にしよう
ある木材運送業者の積載状況を調べたところ、平均で最大積載量の60%しか積んでいないことがわかりました。その後、「積載量は上限の94%に」と具体的な数値を示したところ、9カ月後には積載量は90%にまで上昇したそうです。
目標は「具体的」な数値で示すことが重要です。人は求められる以上のことはなかなかしませんが、具体的で受け入れやすい目標を提示されるとやる気を出します。「頑張れよ」という抽象的な言葉よりも、「あと10件分お願い」などと言うほうが行動につながるのです。
ここで大事なのは、「手が届きそう」「実現可能性がある」ことです。実現のイメージが湧かない高すぎる目標もまた、人を無気力にしてしまうのです。モチベーションを上げるには、「難しそうだけどできること」を掲げることです。具体的な数値を出せば、「手が届きそう」かが判断できるのです。
目標は具体的な数字で表わそう
ある実験で、「アンケートに答えてくれたら5ドルあげます」と発表しました。Aチームには「締め切りは5日後です」と伝え、Bチームには提出期限を設定しませんでした。すると、Aチームの提出率は66%、Bチームはわずか25%でした。5ドルという報酬があるにもかかわらず、Bチームは提出しない人のほうが多かったのです。
この実験からわかるのは、人は期限を設けないとやる気が出せないということ。つまり、相手に動いてもらうには、区切りをつくることが重要です。「なるはやで」と言うよりも「○日の○時まで」などと具体的な期日を設けたほうが、相手のためにもなるのです。また期限を決めることは、いつ集中して取り組むか、予定や優先順位を決めるのに役立ちます。
この考えをより活用し、小さなタスクにも期限を設定してみましょう。たとえば、プレゼンの準備なら、資料集め、パワーポイントの作成、データや数字の確認、話す練習など、さまざまなタスクに細分化できるはず。それぞれに区切りをつけると、スムーズに準備が進むでしょう。
細かい仕事にも締め切りを設定しよう
《『THE21』2017年10月号より》
更新:11月22日 00:05