2017年08月16日 公開
2023年03月23日 更新
なかでも意識してほしいのが、「継続的な数字」と「一時的な数字」を分けることです。
先ほどの営業部の例を見てもわかるように、特に売上については、この二つを分けることが必須と言っていいほどです。
「継続的な売上」とは、仕組みを作ることで、いったん契約した顧客から定期的かつ自動的にお金が入ってくるものです。
携帯電話の通信料金や雑誌の定期購読などは、代表的な例でしょう。
孫社長の言葉を借りれば、これが「牛のよだれのような」売上というわけです。
一方、「一時的な売上」とは、文字通り1回きりの売上です。
この二つを比べた時、ビジネスや会社にとって、どちらが重要か。
ライフタイムバリューの観点から見れば、「継続的な売上」の割合を増やすことが会社の基礎体力を強化し、業績を安定させてくれるのは間違いないはずです。
ところが、「継続的な数字」と「一時的な数字」を分けて数字を出している企業は、それほど多くはありません。その結果、会社の基盤が揺らいでいることを見逃し、気づいた時には手遅れになってしまう企業が後を絶たないのです。
〝二つの売上〞を分けて数字を出さないと、どんなことが起こってしまうのか。
それがよくわかる事例を紹介しましょう。
上のグラフは、ある会社の過去四年間の売上推移を示したグラフです。
多少の上下はありますが、一定水準をキープしており、安定した企業のように見えます。
一方、下のグラフは、これを「継続的な売上」と「一時的な売上」に分けたものです。
見比べてみると、どうでしょうか。「継続的な売上」の割合が急降下していると、ひと目でわかるはずです。
こうして分けてみると、いかにこの会社が危機的状況にあるかが実感できます。
このグラフから読み取れるのは、継続的な売上を稼ぎ、この会社の土台となっていたはずのビジネスが壊滅的に落ち込んでいるということです。
もしかしたら、自社よりも圧倒的な低価格で同じサービスを提供する競合他社が台頭してきたのかもしれません。あるいは、自社のサービスに代わる画期的な新商品が誕生し、顧客を奪われてしまったのかもしれません。いずれにせよ、現場の社員たちが必死になって一時的な売上をかき集め、落ち込んだ売上を穴埋めしている現状が明らかになりました。
会社の業績が落ち込んだ時、「一時的な売上」を作って何とかしのごうとすることは、よくありがちです。自社開発のWEBサービスを提供し、ユーザーから月額で課金するビジネスが本業なのに、売上が下がってきたので、単発で他社のシステム開発を請け負って一時的に数字を上乗せする。こうしたやり方で、決算期などを乗り切ろうとする会社は少なくありません。
しかし、このやり方はあくまでその場しのぎであり、決して長続きしません。
継続的な売上なら、いったん仕組みを作ってしまえば勝手にお金が入ってきますが、同じ金額を一時的な売上で稼ごうとしたら、数倍〜数十倍の労力が必要になるからです。
いくら現場の社員が頑張っても、気力や体力には限界があります。このままでは、この会社はいつかドカンと売上が落ちて、経営そのものが危うくなる。このグラフを見る限り、そう判断せざるを得ません。
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日本の経営者の大半は「数値化」の能力がない! >
更新:11月25日 00:05